脱炭素#4
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日本の3メガバンクグループが環境関連融資に30兆円を投下するという。実際に、グリーンボンドやサステナビリティ・リンク・ローンなど企業の資金調達を目的としたエコ金融商品の展開に積極的だ。だが、最も重要なのは脱炭素への「移行資金」だ。既存事業の膿を出しながらエコシフトを遂げるには、環境分野への新規投資以上に巨額資金が必要となる。特集『脱炭素の衝撃 3000兆円の衝撃』(全12回)の#4では、30兆円融資どころでは全く足りない資金需要の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

3メガバンクがひっそりと準備する
30兆円」を超える環境マネーとは

「とにかくまず金の手当てをしなければ始まらない。カーボンニュートラル(炭素中立。二酸化炭素の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすること)を達成するために事業構造を転換するには、巨額の設備投資と研究開発投資が必要だ」

 経済産業省のある幹部がそう断言するように、脱炭素と経済成長の二兎を追う、世界規模の「グリーン経済戦争」に日本企業が勝てるかどうかは、投資競争の成否に懸かっている。

 折も折、金融市場には一足先にESG(環境・社会・企業統治)に投資を振り向ける潮流が生じていた。日本では生命保険会社などがESGに考慮する姿勢を表明。世界最大の資産運用会社である米ブラックロックも、「2年前に情報交換したときは『第一に重視するのは足元の収益性だ』と言っていたのに、1年前には『環境に配慮していることが重要だ』と明らかに方向転換していた」(大手メーカー幹部)という。

 こうした投資家サイドの“変節”もあり、環境改善が見込まれるグリーンなプロジェクトのために発行される「グリーンボンド(債券)」といった「サステナブルファイナンス(持続可能な社会を実現するための金融)」市場は、この約10年間で飛躍的に拡大した。債券市場だけ見ても、年間発行額(2020年)は5000億ドルに届こうというところまで急増している。

 ESGブームは確実に到来しており、世界の環境関連投資は3000兆円に上るといわれる。

 ところが、である。日本政府が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(洋上風力産業や水素産業など、重要な14業種についての実行計画)」で記した、3メガバンクの環境関連投融資はわずか約30兆円。世界的な金余りで環境関連に資金が殺到しているという割には、あまりにもささやかな規模である。

 すでに、3メガが準備した30兆円という数字に、メーカー幹部からは「少な過ぎる」と悲鳴が上がっている。考えてもみてほしい。例えば鉄鋼業界だけでも、脱炭素に向けて高炉を1基造り変えるために数千億円もの資金を投じなければならない。先立つものがなければ、日本の産業界全体をグリーン社会へ導く“大改造”などできるはずもない。

 実は水面下では、3メガは環境対策として、30兆円を優に超える「準備資金」を用意しているのだという。どういうことなのだろうか。