私たちの世代の「老後」は、前の世代の人々が口にしていた「老後」とはまったく状況が異なるからです。ガンなどの難病にも良い治療法が開発され、人々の健康意識も高まったおかげで、平均寿命は80歳から100歳近くにまで延びようとしています。

 前の世代に比べて、あまりにも余生が「長い」。すると、余生が余生ではなくなります。定年後の人生を現役時代と変わらず人生の「本番」として生きていく必要が出てくるのです。

「坂の上の雲世代」と「昭和・平成を生きた世代」までは、人生のエネルギーカーブが「一山」で済みました。富士山型一山主義の人生観で良かったのです。

 それに比べて「令和」を生きる私たち世代は、エネルギーカーブのピークがいくつも連続する、いわば「八ヶ岳型連峰主義」でなければ充実した一生を過ごせない事態になりました。寿命が延びたのは喜ばしいことではあるのですが、人生が90年から100年を超えるのが当たり前となる時代には、新しい生き方が求められます。

60歳からの教科書 お金・家族・死のルール『60歳からの教科書――お金・家族・死のルール』
定価935円
藤原和博 著
(朝日新書)

 以上のことを踏まえて、先ほど描いたエネルギーカーブを見直してみてください。

 富士山型の、一つしかピークを描かなかった方には、その山をぜひ、いくつもの線が連続する「八ヶ岳連峰型」のエネルギーカーブへと変えてもらいたいのです。

 この100年で、人生の長さは倍になりました。一つの山だけではその長い人生を充実させるにはとうてい足りません。これからの時代を生きる人は、いくつもの山と谷が交互に訪れる、連峰型エネルギーカーブの人生を生きることが普通になるはずです。あなたが今60歳だったとしても、この先の人生は30年から40年もあるのですから。

「ピーク」はまだまだ、あなたの生き方次第でつくれるのです。