人生100年時代といわれる中で、60歳を超えてからも働き続ける人は今後ますます増えていくだろう。企業にとってもそうした「シニア社員」にいかに活躍してもらうかは、大きな課題といえる。ただ、現状は役職定年を経て、環境や立場が変わると働く意欲が低下してしまうシニア社員も少なくない。こうしたシニア社員の意欲を高めるにはどうすべきなのか。意欲低下の原因を明らかにするとともに、モチベーションアップのヒントを探ってみよう。(リクルートマネジメントソリューションズ 星野翔次)
役職定年後のやる気・意欲
約4割が「下がったまま」
昨年4月、改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。今後も、労働力人口総数に占めるシニア社員の割合は高まることが予想され、シニア社員の活躍は欠かせません。
しかし、現状では、多くの企業で「シニア社員の意欲低下」が問題に挙がっています。そこで本稿では、意欲の高いシニア社員と、低いシニア社員の原因を構造で捉え、そこから見えてくる関わり方のポイントを解説いたします。
そもそもシニア社員とは、どのような人を指すのでしょうか。
シニア社員に明確な定義はありませんが、高年齢者雇用安定法において「高年齢者」を55歳以上の者と定めていること、高年齢者雇用安定法の改正により努力義務として70歳までの就業機会の確保が求められていることから、本稿では、「55~70歳で、管理職ではないビジネスパーソンと、管理職ではあるものの部下がいないビジネスパーソン」と定義します。
まず、リクルートマネジメントソリューションズが役職を外れた経験(ポストオフ経験)のある50~64歳の会社員766人を対象に行った以下の調査結果をご紹介したいと思います。ポストオフ後の仕事に対する意欲・やる気の推移について尋ねたところ、「下がったまま」と回答した人は約4割に上り、「一度下がって上がった」と回答した人は約2割にとどまりました。多くの人が、ポストオフ後に仕事に対する意欲を低下させていることが分かります。
https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000348/ 拡大画像表示
ポストオフによって報酬や処遇も変わるため、それらへの不満が意欲低下につながることは想像に難くないと思います。ただ、複数のシニア社員にインタビューを行ったところ、報酬・処遇に対する不満もさることながら、周囲との関わりが原因で意欲低下が起きていることが分かってきました。