そもそも人は、病気に対して自己中心的に判断するように出来ています。痛い病気、うつる病気となると予防しますが、生活習慣病(糖尿病)のように、うつらないし、すぐに死ぬわけでもないし、だと怠けてしまう。

 ストレスも同じで、心療内科に駆け込むに至るまでストレスコントロールをしないのです。痛いとか苦しいとかを感じてギリギリになってから、なんとかならないかと思うのです。

 心療内科にいらっしゃる方々が「薬でなんとか治りませんか」とよくおっしゃるのですが、先生はいつも同じ答えを返しています。「悪くなるまで長いこと何もしなかったんですから、治るまでにも長いことかかります」と。薬を飲んで症状が軽くなると、またワーカホリックに戻り、以前よりもっと症状が重くなってリピーターとなっていく方も珍しくありません。

 生活習慣に密着しているものに、ドラッグ依存があります。これを止めるのは、ご存じのように大変難しい。ドラッグの恐ろしさをもっと強調すれば、予防効果があるかもしれないと、アメリカで依存症の人たちの「強烈にぶっ飛んでる状態」をテレビ放映したところ、意図したことと反対に、そんな状態を体験してみたいという人を増やしてしまったという失敗例がありました。

禁煙運動はなぜ成功したか?

 こうしたように、生活習慣に寝強く関係しているものは、頭で解っていても反対の方へと動いてしまうものです。喫煙がそうでした。肺がんの恐ろしさをいくら強調しても、愛煙家を禁煙に結び付けることは、長年できませんでした。 社会からたばこを激減させる味方となったのは、間接喫煙という新しい恐怖でした。吸っている人の傍にいたら、間接的に肺がんになるかもしれない。言いかえれば、間接喫煙で肺がんになるかもしれない。自己責任ではないのに、病気がうつるということです。

 喫煙に対するこの恐怖は、強制的な禁煙環境を作り出していきました。公共の場所から灰皿が消え、喫煙の締め出しが実施されます。結果的に大成功したわけです。これは、いつまでも個人の自主性に頼っていたら、予防行動には一向に効果が出ないことを証明するような出来事でした。

ストレスの連鎖感染

 ストレスは感染する。

 そう言ったら、科学的ではないと叱られるでしょうか? 私はストレスは感染する、つまり、うつる病いだと思っています。うつ病そのものはうつらなくても、生活習慣が感染する。そのことによって、最終的にはうつ病に倒れることになるのです。