承認欲求という拠り所を失った今、私は何を頼りに生きればいいのか

 その事実に気が付いた瞬間、絶望しました。

 今までの自分の意思決定はなんだったのか。

 私はこれまで、「承認欲求」を拠り所にして生きてきたんです。自分の意思なんて、他人からの評価にかき消されて、本当に考えられたこともなかった。だって、その他人の目を気にして決断したことも、全部自分の意思で決めたことだと思い込んでいたのですから。

 そして私は今、とてつもなく絶望しています。

 これまで信じてきた自分のアイデンティティが、すべて崩壊しています。人生も崩壊したんです。

 私が本当に何をしたいのか、何を幸せと思うのか、何を頑張りたいのか、それも全部わからない。

 いったい何を頼りにして生きていけばいいのか、わからないんです。

 人生ゲームでゴール直前まで進んだと思ったのに、台風でふりだしに戻されてしまったような、そんな気分。

 自分のことが、すっかりわからなくなってしまった。

 それに、自分を信じる気持ちもなくなった。嫌いになった。承認欲求が手から離れてしまえば、自分の嫌なところばかり目についてしまう。自己嫌悪に陥る。

賢くて、
明るくて、
社交的で、
知識人で、
みんなからの愛されキャラだったはずの理想の私は、もう今の私のなかには存在しない。

だらしなくて、
勉強不足で、
人見知りで、
のろまで、
友達が少ない、
そんな嫌な部分ばかりが気になってしまう。

 はっきり言って、自分のことが嫌いです。これなら承認欲求の存在に気が付かずに、「理想の自分」を背負ったまま生きられていたら幸せだったのかもしれないとすら思う。

 でも、崩壊してしまった山は、もう元には戻りません。

 ここにきて、成長どころか、ひどい退化をしてしまったのかもしれない。

 また一からすべて組み立てなければいけなくなりました。

 これから今までより何十倍も苦労するでしょうし、自分を好きになるにはずいぶん時間がかかるでしょう。

 ですが私はこれを、進歩だと思いたい。

 別の道を進むことに決めたのだと、そう思いたい。

 もしかしたら退化してしまったのかもしれないけれど、それでこの大ぼら吹きだった自分が正直になれるなら、自分の人生においてはプラスの路線変更だったのだと。

 そう覚悟を決めれば、ここからの再構築でどんな新しい自分の夢が見つかるのか、どんな本当の自分に出会えるのか、楽しみといえば、楽しみかもしれません。もちろん、怖いことには変わりないけれど。

ほとんどの人間は、自分の意思よりも他人の評価を尊重する川代紗生(かわしろ・さき)
1992年、東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。
2014年からWEB天狼院書店で書き始めたブログ「川代ノート」が人気を得る。
「福岡天狼院」店長時代にレシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。
メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。
現在はフリーランスライターとしても活動中。
私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)がデビュー作。
Twitter@kawashirosaki