雑な言い方をしてしまえば、ポジティブに振る舞おうとするアカウントとそうではない層のギャップだ。ツイッターの匿名アカウントの投稿で広く拡散される内容は、低賃金ハードワークに対する愚痴であったり、きれいごとを語りながらやりがい搾取する企業の欺瞞(ぎまん)への指摘であったり、高学歴を求めながら奨学金も返せないような低賃金を提示する採用構造への憎悪である。

 一方で、実名アカウントの中でも「人事」や「広報」担当などと職種名を掲げたアカウントたちは、当然ではあるが企業側の論理を語る。仕事への「誠意」、企業への「忠誠」、絶対的成長のための現代における「ハウツー」などなどが日々語られ、それらがRTされ、いいねされる。ツイッターは同じような人たちをフォローし合う人が多いため、企業側の論理が彼らにとっての「常識」となる。

 それぞれのタイムラインで違う光景が流れるが、それが交錯するときに炎上する。

「待遇/給与で会社を選ぶ方と働きたいとは思わない。」とツイートしたアカウントが、自分のタイムラインとは違う場所で流れる、やりがい搾取、労働者の権利、ワークライフバランスといったキーワードを少しでも摂取していれば、うかつなツイートをするに至らなかったかもしれない。

 とはいえ、本当に怖いのは、一見労働者の権利を尊重するように見せかけて入社してみたらまったくそうではない企業だろう。最初に書いた結論に戻るが、離職者を減らすために人事担当が行うツイートとしては有益なのかもしれない。