菌床から収穫できるシイタケは、菌床の重量の30~33%程度なので、年間1万2000トン程度が「中国育ち日本収穫の国産シイタケ」として販売されている。もちろん「○○県産シイタケ」としか表示されていないので、消費者は「日本育ち日本収穫の国産シイタケ」と見分けることはできない。

 この産地表示のルールについては、食品表示法が制定された2013年以前から問題となっていて、農水省や生産者団体が、消費者庁に「シイタケにも長いところルールを採用してほしい」と強く要望していたのだが、消費者庁は20年に正式に却下している。

 シイタケには長いところルールが採用されなかったが、消費者庁は「菌床栽培シイタケの場合、採取地(収穫したところ=原産地)と作付け地(種菌を植え付けた場所=菌床製造地)が異なる場合は、菌床製造地を表示することが望ましい」と推奨している。

 ところが、菌床製造地を表示している生産者は非常に少ない。しかし「中国育ち日本収穫の国産シイタケ」と「日本育ち日本収穫の国産シイタケ」を消費者に区別させるには、この方法しかない。菌床製造地が表示されたシイタケとそうでないシイタケが店頭に並べば、消費者もその違いが理解できるようになるはずだ。

 今回のアサリ偽装の問題について、熊本県はどのような産地ルールを提案しているのかわからないが、シイタケのように、漁獲したところが産地となると、それこそ短期間蓄養すれば堂々と国産と表示できるため、シイタケと同じような問題が起きる可能性がある。

 どんなルールを作っても、ルールを破って不当にもうけようとする人は、いつの世の中でもいる。ルール作りも大切だが、ルール破りを一刻も早く見つけ、厳しい処分をすることの方が偽装防止につながるだろう。また、国産アサリの漁獲量が激減している中、日本の海洋資源確保という面からも、資源管理を厳しくすることは、偽装の防止にも役立つはずだ。