ウクライナの首都キエフを
ロシア軍が制圧する可能性

 さて、ロシア軍が、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国に入った。

 プーチンは22日の段階では、「軍を派遣するかは現地の状況次第」と語り、派兵を公式には認めていない。しかし、欧米は「すでに入った」とみている。たとえばEUのボレル外相は22日、「ロシア軍がドンバス地域(=ドネツク、ルガンスク)に入った」と断言した。ロシア軍の動きは人工衛星から把握できるので、ボレル外相の言葉は事実だろう。

 両地域については、ウクライナのみならず国際社会も「ウクライナの一部」と認識しているので、「ロシアがウクライナへの侵攻を開始した」といえる。

 問題はこの後のロシア軍の動きである。

 ロシア軍はドネツク、ルガンスクで止まるのか、それとも、ウクライナの首都キエフまで進むのか?

『ウクライナ侵攻をもくろむプーチンの「本当の狙い」はどこにあるか』にも書いたが、「ドネツク、ルガンスクをウクライナから完全独立させて、ロシアの属国にする」のは、「予想通りの展開」だった。

 ただし、「キエフ侵攻」は、現時点での可能性は低い。

 もしもロシア軍がキエフを侵攻すれば、プーチンは、「現代のヒトラー」として、その悪名を歴史に残すことになるだろう。

 だが、状況次第では、キエフ侵攻が起こる可能性もある。

 問題は、自国領にロシア軍が侵攻してきたと認識しているウクライナ政府とウクライナ国民の動きだ。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は2月22日、国民に向けた演説で、「ロシアは、2014年からドンバス地方(=ドネツク、ルガンスク)にいたロシア軍を合法化した」と語った。

 ロシア軍は2014年からドネツク、ルガンスクにいたが、ロシアはその存在を認めていなかった。だが、プーチンは「これから平和維持軍を送る」と宣言し、「元からいたロシア軍」が「公に活動できるようにした」ということだ。

 ゼレンスキーが冷静さを保ち、ウクライナ国民の怒りを鎮めることに成功し、ドネツク、ルガンスクへの攻撃を自制できれば、ロシア軍のキエフ侵攻は起こらないだろう。

 だが、ウクライナ国民の怒りをコントロールできず、「ドネツク、ルガンスクからロシア軍を追い出す!」ということになれば、全面戦争に突入する。

 そうなれば、プーチンはキエフ侵攻の命令を下すだろう。

 そう考えると、ウクライナはロシア軍と戦うことを自制したほうがいいと、筆者は思う。だが、それは他国の話だからでもあろう。

 たとえば中国が尖閣に侵攻したとき、「日本は中国軍と戦うな」とは言えないだろう。

 ウクライナ国民から見れば、ロシア軍が自国内に侵攻してきたのだから、「戦って追い出そう」となるのは当然だ。

 それでも筆者は、ウクライナとロシアの戦いがここで鎮静化することを願う。