最近では、先ほどの2人が所属する女子バスケットボール日本代表や、仲良くしている廣瀬俊朗君がキャプテンを務めたラグビー日本代表が、これに当たるかと思います。漫画『スラムダンク』でいうと、湘北高校がこれですね。

 同じ井上雄彦先生の作品『バガボンド』において、宮本武蔵の認知脳的な弱みが表現されています。認知脳とは意識が外側に向くことで、三大外界(環境・出来事・他人)に囚われてしまう脳の動きのことです。その反対が非認知脳で、意識が内側の自分自身に向いて整理されている状態です。最初の頃の宮本武蔵は、とにかく斬って斬って斬りまくって、認知脳的に天下無双の結果に囚われ、証明しようとしていました。

 しかし、沢庵和尚や柳生石舟斎らに会うことで、他の剣豪とは違う自然体の姿があることに気づく。その後、非認知脳を磨くことに意識が向き、晩年『五輪書 水の巻』をしたためていったのです。(※編集部注:漫画『バガボンド』は休載中のため、結末はこれに限りません)。

『スラムダンク』で考える勝利学
完成形ではなかった山王高校の沢北栄治

『スラムダンク』湘北高校バスケ部に学ぶ、心が揺れない最強チームの作り方

 では、『スラムダンク』に目を向けてみましょう。桜木花道は自身の栄光時代について「オレは今なんだよ」と自覚している一方で、赤木晴子さんの一挙手一投足に揺らいでしまう(笑)。あと、流川楓にも囚われていますよね。そんな流川もスキルが高くチャレンジャブルですが、コミュニケーションが苦手。

 あと、スーパースターとして描かれている沢北栄治もまた、完璧ではなかった。全国大会での湘北戦、流川のシュートが決まって、残り27秒でリードしていたのは湘北です。土壇場の中、山王も慌てました。桜木を木暮に代えようとする湘北ベンチの動きを見て、タイムアウトをやめた山王。試合を託された深津一成から見事なパスが沢北に入って、これを決める。残り9秒の出来事です。