2022年秋に公開が予定されているのが、映画『スラムダンク』だ。漫画作品は、井上雄彦氏の代表作であり、多くのバスケットファンやスポーツファンの心を掴んだ不朽の名作でもある。そんな井上氏とも親交があり、書籍『スラムダンク勝利学』の著者でもある辻秀一氏が、スポーツドクターの見地から同作品を見たときに気づいた、意外なこととは。(取材・文/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)
「今」に向き合える選手が揃う
エクセレントチームとは
私はこれまで、多くのスポーツ選手を支えてきました。バスケットでいうと、今回の東京オリンピックで銀メダルを獲得した女子バスケットボールの本橋菜子さんと、長岡萌映子さんです。世界には魅力的なエクセレントチームがありますが、どれも「個人」「全体性」「関係性」の3つの要素が成熟しています。自立性の高い個人が全体に対して共有を高め、素晴らしい信頼関係がある。こういったチームは結果を残す機会が多い。これを支えるのが個人なんですね。
どんなに高いスキルを持っていても、今目の前のことに集中できていない選手がいれば、戦力になり得ません。過去のミスを引きずって囚われたり、未来を不安に思ってチャレンジできなかったりしている選手たちから、共有や信頼を生み出すのは困難でしょう。
つまり、心を整えて「今」に向き合える選手が揃うことが理想です。「何をどんな心でやるのか」が大事ですから、チームに関わるすべての人が、どんな心でやるのかという部分まで責任を持つのです。となると、できるだけご機嫌でいる方が良い。自分に対しても他者に対しても、前向きな影響を与えることができるから。それが共有レベルを高め、信頼を築くことになるのです。