「コロナ禍で直撃を避けられた企業こそ、意識改革が必要だ」。事業再生や審査の現場を歩くと、こう感じることが多い。コロナ禍で加速する債務整理の枠組みが、実はコロナ禍を直接受けていない企業にも影響する恐れがあるからだ。これまでの法的手続きによる債務整理は、申請時点での債権者の権利最大化が主眼だった。だが、コロナ禍での私的整理では、債務者の資産と事業価値の最大化も重視されている。一般債権者の顕在化している債権は保全されても、将来の取引が再生過程で必ずしも担保されるとは限らない。「私的整理は金融債権のみが対象」と油断すると、気がついたときには取引が先細っていることもあり得る。(東京商工リサーチ情報部 原田三寛)
減少する「倒産・廃業」
増える「過剰債務」
長引くコロナ禍は、飲食店や宿泊業など対面型サービス業に大きな影響を与えた。物流や原材料の調達などサプライチェーンの乱れも、最終製品メーカーの業績予想を狂わせた。
政府や自治体、金融機関はこうした企業に矢継ぎ早に支援策を繰り出し、2021年の企業倒産は6030社(前年比22.4%減)と57年ぶりの低水準を記録した。史上最大と称される支援策の効果は絶大だった。