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日本企業のM&Aが急増しており、2021年は過去最多の4280件を記録した(レコフデータ調べ)。しかし、M&Aの成功率は思いのほか低く、その原因の多くは、M&A後の統合プロセスにおける「人と組織」の問題にあると言われている。この連載では、人材開発・組織開発の専門家が著した最新刊『M&A後の組織・職場づくり入門』(齊藤光弘・中原淳 編著、東南裕美・柴井伶太・佐藤聖 著、ダイヤモンド社刊)の中から、人と組織を統合する際の課題や具体的なアクションについて紹介していく。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
M&A「成功」はわずか36%!?
日本ではM&Aの件数が急速に増えており、2021年は過去最多を記録しています。M&Aは、すでに企業の成長手段の一つとして日常化していて、新規事業や新規市場への進出、人材の獲得を目指したアクハイアリング、企業の存続を図るための事業承継など、様々な目的のM&Aが広がっています。しかし、残念ながら、それらの多くが「成功を収めている」というわけではありません。
少し古いデータになりますが、デロイト トーマツ コンサルティング(2013)の調査(*1)によると、過去に実施したM&Aを「成功」だと考えている企業は36%で、当初期待していた成果やシナジーを得られていると回答した企業のほうが少ないのが現状です。この調査で回答した企業の大半は、当初設定したM&A目標の「80%超」を達成できれば「成功」と考えていました。80%の目標達成すらハードルは高い、ということがおわかりいただけると思います。
なぜM&Aの成功率は低いのでしょうか。シナジー創出を阻む要因として一番影響が大きいのは、実は「人と組織に関わる問題」です。
*1 デロイト トーマツ コンサルティング(2013)「M&A経験企業にみるM&A実態調査」では、過去5年間に買収・売却を実施した日本企業190社についてM&Aの成功率を調査しました。回答した企業の約8割は、当初設定したM&Aの目標を80%超達成できれば、成功と考えていました。