なぜ、これが問題になるのでしょうか。ここで問題なのは、110万円をどのように子どもに渡すかという点です。もしここで、子どもが普段使っている銀行口座に振り込むのなら問題はありません。でも、そこで親は考えます。

「だまっていてもお金が入ってくるのは、教育的によくないのではないか。じゃあ、子どもには黙って口座をつくってあげて、そこにお金を貯めておこう」

 子どものためを思って、そういうことをする気持ちはよくわかります。しかし、そうしてつくった預金口座こそが、まさに名義預金なのです。ハンコも通帳もカードも親が持っていて、子どもには預金口座があることすら知らせていなければ、完全な名義預金です。名義は子どもであっても、実質的に親の預金だと判断されてしまうのです。親が亡くなって相続がはじまると、この預金は親の財産のまま。亡くなった親は子どもに財産を移動したつもりなのに、相続税の課税対象になってしまうのです。これでは節税にはなりません。

 しかも、名義預金には時効(専門的には除斥期間といいます)がありません。贈与ならば、亡くなる3年以上前の贈与額が相続財産に合算されることはありませんが、名義預金は贈与ではありません。相続が発生すると、税務署は公平な制度として相続税をとるために、名義預金の存在がないかどうか徹底的に狙ってきます。このことは、ぜひ頭に入れておいてください。

暦年贈与を利用して「損して得取れ」!

 暦年贈与をする際、名義預金でないことを証明するために、ほぼ間違いない方法を紹介しましょう。それは、「贈与税を申告して納税する」という方法です。ちなみに、贈与税を支払うのは、贈与を受けた側です。

「節税の方法を知りたいのに、なぜ贈与税を払わなくてはならないのか?」

 そう疑問に思われるかもしれません。しかし、多額の贈与税を払うわけではありません。最低限の金額でいいのです。具体的には、次のようにします。