4月の東証再編を機に上場廃止が増加するとの見立てが、市場関係者らの間で持ち切りだ。上場基準の厳格化で「廃止」に追い込まれるパターンだけでなく、戦略的に市場を退出する企業も増えそうだ。特集『東証再編が誘発! 上場廃止ラッシュ』(全15回)の#1では、上場廃止の道を選んだ、ある企業の実例を紹介する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
「上場廃止」は今後増加する
市場関係者が予想する理由
「上場廃止を考えている経営者が明らかに増えている」(銀行系証券会社幹部)
「株式非公開化の案件で昨年は多忙を極めた。この流れはまだまだ続く」(独立系財務アドバイザー)
今、市場関係者の間でそうささやかれるのには理由がある。その一つが今年4月に行われる東京証券取引所の市場再編だ。
東証の1部、2部、マザーズ、ジャスダックから成る市場区分が廃止され、新たにプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編される。上場企業は昨年末までに移行先の新市場を選択し、東証が1月11日にその結果を公表した。それによれば、プライム1841社、スタンダード1477社、グロース459社で新市場は始動する。
問題は、特にプライム上場企業のうち296社が、上場維持基準に達していないことにある。プライムは流通株式時価総額100億円以上の基準に未達の企業が217社に上り、時価総額が小さい中堅・中小企業の大きな壁となっている。
東証は、基準到達に向けた計画書(改善計画書)を提出すれば、希望する市場に移行できる「経過措置」を設けているが、数年内とみられる経過措置期間中に基準に到達しなければ上場廃止だ。
新たな3市場は、これまでの1部・2部といった階層構造ではなく、独立した並列構造となる。そのため、プライムの基準に満たなければスタンダードに自動的に降格するのではなく、いったんプライム上場が廃止され、別の市場への上場手続きをすることになる。
こうしたプライム「猶予企業」の実に9割が基準を満たせず、最終的に上場廃止に追い込まれるとの見方もある。まさに“上場廃止ラッシュ”だ。
一方、基準を満たしているが、そもそも上場する意義を失い、あえて上場廃止を選ぶ企業も現れている。