世界経済が2020年3月に沈んだ際、インフレ率はゼロに向かっているように見えた。それ故、英イングランド銀行(中央銀行)の元政策委員であるチャールズ・グッドハート氏(85)が、2021年にインフレ率が5~10%となり、高止まりすると予測したのは驚くべきことだった。グッドハート氏は世界経済に劇的な変化が起きつつあり、財政刺激策と新型コロナウイルス流行後の回復はそうした変化を加速させるだけだと推論していた。安い労働力の過剰供給が続いたことで、何十年も物価と賃金が低水準にとどまっていた。それが労働者不足の時代、ひいては物価上昇を招くことになったと同氏は指摘する。「コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、この30~40年のデフレ圧力と、向こう20年のインフレ復活との境目となるだろう」。グッドハート氏はインタビューでこう話した。2022年末頃の先進諸国のインフレ率は3~4%で落ち着き、その水準で数十年とどまると予想する。コロナ前の10年間のインフレ率は1.5%程度だった。