「ゼロコロナ」を目指す中国で、一刀両断の極端な政策が繰り返されてきたことは周知の通りだ。その影響は家庭で飼われている犬や猫などにも及んでいる。突如行われるロックダウンで長期間帰宅できなくなったり、住民がホテルに強制移動させられたりした結果、飼い主がペットたちと引き離されるケースが続出し、これまで多くのペットたちが犠牲になっている。(ジャーナリスト 姫田小夏)
飼い主が新型コロナに感染すれば、ペットの命が奪われる!?
中国人留学生の劉さん(仮名・21歳/女性)は、東京でのコロナ禍を愛猫と共に乗り越えてきた一人だ。「猫がいたので孤独にも耐えられた」と話す一方で、「中国の犬や猫がとても気になる」と言う。
「中国では、ロックダウンで飼い主が家に帰れないという事態が多発しました。家にはペットの面倒を見る人がいないわけですから、動物たちの食べ物は尽きてしまいます。ボランティアが給餌をした小区(複数の集合住宅を管理する居住区)もありましたが、そうでない居住区では動物たちは天命を待つしかありませんでした」
劉さんの話からは、餓死したペットたちがいたことがうかがえる。もしかしたら“留守番ペット”の犠牲はかなりの数に上っている可能性がある。筆者は、地方政府で公務員をしていた父親を持つ胡さん(仮名・29歳/女性)に尋ねたところ、言葉を慎重に選びながら次のように答えてくれた。
「私が言えるのは、ペットが大量に処分されたという話は直に聞いたことがない、ということです。けれども、中国では住人の隔離先にペットを帯同させない地方政府もあるし、人への対応で精いっぱいという能力不足の地方政府もあります。こうした状況からペットがどうなるかを類推することは不可能ではありません」
一方で、中国のネット記事は、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の初期に、江蘇省や浙江省、あるいは陝西省などの地方都市で、感染の危険性を理由にペットたちが殺処分されたことを伝えている。江蘇省無錫市では、飼い主のコロナ治療中に飼い猫が、感染を疑う住人たちの強い要求で処分された。
ペットを安楽死させるケースもあった。昨年9月、黒竜江省ハルビン市では、コロナ陽性と診断された3匹の猫が安楽死させられた。飼い主は、飼い猫に治療の機会を与えてほしいと担当の行政職員に願い出たが拒絶された。ウイルスがペットから人にもうつると信じる行政側の言い分は「陽性の猫を処分しなければコロナはなくならず、飼い主さえも自宅に戻れない」というものだった。
動物専用の黄色い「無害化処理袋(殺処分袋)」を用意している居住区もある。コロナに対する徹底した危機管理だが、ペットを含む動物の処分が日常化している可能性を物語っている。