「オンラインでの動画配信」に特化している理由

 創業翌年の2005年にはYouTubeが誕生した。「周りの人からは『(動画事業は)いいところに目をつけたね』と言われましたが……」と中村さんは述懐する。そもそも、外資系IT企業の営業パーソンだった中村さんが、テレビCMやYouTubeのようなBtoCの動画ではなく、BtoBの動画制作に特化した理由は何か?

中村 BtoBにこだわったのは、前職での私が、朝2回・昼3回・夜1回といった営業プレゼンテーションに明け暮れていたことにあります。「せめて、プレゼンの一部が動画になれば効率的なのに」と思っていました。そうして、ヒューマンセントリックスを立ち上げ、営業プレゼンテーションの多い外資系企業に「プレゼンの一部を動画にしませんか?」と企画提案していきました。当時は、「プレゼンテーション動画」というものは世の中にほとんどなかったのですが、好意的に受け止められました。

 そして、もうひとつこだわったのが「オンライン配信」です。しかし、オンラインで動画を動かそうとすると、ストリーミングサーバーが必要とか、月額50万円かかるとか……お客様に別の負担をかけないといけませんでした。動画をもっと簡単に安価で配信するために、当時98%のブラウザに搭載されていたFlashという技術に注目しました。これだと、お客様に余計な手間をかけることなく、プレゼンテーション動画をWebページに掲載できます。パソコン画面の一部にフレームが出て、そこで人が動いていく。文字を動かすだけではインパクトがなく、人がプレゼンテーションを行い、人以外はアニメーションで軽くする仕組みにして、Webサーバーで配信するかたちにしました。お客様に負担をかけることなく、ホームページのコンテンツとともにプレゼンテーション動画を見られるようにしたのです。

 CD-ROMといったパッケージメディア(現在ならDVDなど)に収録する動画なら、表現の制約はそれほどなかったはずだが……。

中村 私がオンラインでの配信にこだわったのは、遠隔地の人にも容易に動画を見てほしかったからです。大企業のBtoB営業は全国各地に及び、動画をCD化し、複製して発送するにはお金と手間がかかります。「だったら、その分のコストをコンテンツ制作に回しましょう」というのが私の考えでした。ですから、当社の動画制作は、いまでもオンライン配信を前提にしたものです。ファイルで納品し、制作物をコピーフリーにしているので、クライアントがパッケージメディアにコピーして営業ツールにすることもできます。いずれにしても、いつでも、誰でも、簡単に動画を見られることが大切で、そのうえで、私たちは良質なコンテンツにこだわり続けています。