仕事関連の多様なものが研修・教育動画へ移行
オンライン配信によるBtoB動画は、いまや、多くの企業にとって当然の存在だが、配信技術の進歩とともに、企業のニーズはどのように変わってきたのだろうか? コロナ禍以前の10年間(2010年~2019年)の趨勢を聞いた。
中村 コロナの前から企業の動画制作のニーズは年々高まっていました。リーマンショック後は、営業ツールとしての動画活用が増え、起業したときに私が思っていた「動画は強い営業ツールになる」ということが現実化していました。2011年の初頭に、研修動画のオンライン配信を日本弁護士連合会(日弁連)に提案すると、強い関心をもっていただきました。そして、その直後に東日本大震災が発生し、「今年度(2011年度)の研修や説明会を、すべてオンラインで配信したい」と言われました。同時に、いろいろな企業からも相談を受けるようになり、2011年が大きな変節点になりました。リーマンショックがきっかけでBtoB動画が営業の現場に身近なものになり、東日本大震災を経て、HTML5の登場(2014年)で、オンライン視聴が一般的になったのです。
……そして、2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大し、日本の社会にも予期せぬ変動が起こった。
中村 コロナで、私たちヒューマンセントリックスの仕事の階段は明らかに変わりました。世の中全体で「非対面」が基本となり、テレワークに加え、人材教育もオンライン化、営業活動もオンライン化し、社内のリソースをオンライン配信の動画に変えていく動きが加速しています。私たちは、創業18年の蓄積の中で、多様なオーダーに応えられる体制ですが、コロナウイルスが現れた2019年の終わりから2020年初頭にかけては、びっくりする量の案件が飛び込んできました。そのため、社員を増やし、制作体制を強化し、動画収録や配信を行うために自社オフィスもガラリと変えました。コロナ禍3年目の現在でも、毎月、新しいスタッフが入社している状況です。
特に受注が増えたジャンルは「研修」です。従来の階層・職種別研修に加え、社員教育関連の多様なものが研修的な動画としてコンテンツ化されています。テレワーク中の社員がオンデマンドで視聴できる環境にあるからでしょう。当社にお付き合いいただいている企業は大手が多いですが、2021年に制作したもので、新たに「研修動画」に括られる事例を挙げてみたところ、私の想像以上の数になりました。これまでは「社内説明会」として1回1回行っていたものも、何度でも、遠隔地でも視聴できる動画としてストックされているようです。