研修動画では、講師の存在と「目線誘導」が重要

 このインタビュー中も、複数のチームがさまざまな機材を持って、ヒューマンセントリックスのオフィスから撮影現場へと向かっていった。ホームページには「お気軽にお客様のご要望をお知らせください」とあるが、クライアントに向き合うときに重視していることは何か?

中村  まずは「目的」です。私たちは、最初に、動画制作の目的をお聞きします。次に、予算と納期。それから、たとえば、動画出演の講師をクライアントが用意できるか?といったリソースを尋ね、完成した動画をどう配信していくかを一緒に考えていきます。与えられた納期とコストの中で最適なものを創る――当社に在籍する30人あまりのディレクターはそれを常に心がけて実現していくので、多くのクライアントからリピートをいただいています。ディレクターは、肩書は「営業」ですが、クライアントの目的を理解し、課題や状況を把握して解決するコンサルタント的な役割です。経験値があるので、「その目的なら、こういうコンテンツで良い動画になる」と、クライアントの声をヒヤリングしたうえで、しっかりイメージすることができます。

 コロナ禍で増えた「研修動画」の制作。企業がオンデマンドで配信する動画は星の数ほどあるが、中村さんが特に大切だと考えるポイントは……。

中村 研修動画では、講師の方の存在が重要だと思います。その魅力が動画の良さにつながります。講師の方はまさに人それぞれで、リアルではトークが上手な人も、カメラの前ではうまく話せないことがあります。クライアントの連れてきた講師の方が苦労されてしまう場合は、私たちはその方がカメラに慣れるまでじっくり寄り添います。収録現場が堅い空気だと、コンテンツも堅くなってしまうので、ディレクターやカメラマンが然るべき空気を作っていきます。冒頭でお話ししたように、研修・教育的な動画には出演者の「熱量」が大切で、それが受講者の理解を導いていくのだと思います。

「目線誘導」も動画の肝です。語りとシンクロした映像の変化が視聴者の目線を動かし、紙メディアよりも、内容が頭にラクに入っていきます。たとえば、講師が「ここが重要なので覚えてください!」と、画面内のパワーポイントの文字を指さすと、それがクローズアップされたり、字幕になって表れたりして、目線を的確に誘導していくのです。