多忙を極めたエンジニアの残業時間を3分の1に減らした時間術とは?

いつも仕事の進捗が気になって、心の休まるときがない。気が付くと、人より残業している――そんな状況に心当たりのあるビジネスパーソンには、「タイムマネジメント」のノウハウが必要だ。今回は、多忙を極めたエンジニア時代にタイムマネジメントの重要性に目覚め、独自の手法で労働時間の大幅カットに成功した水口和彦さん(ビズアーク・時間管理術研究所)に、即効性のあるタイムマネジメントの基本ルールを聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、聞き手/田村淳一、構成・文/元山夏香)

タイムマネジメントを意識するようになったきっかけは…

――コロナ禍でテレワークが増えたことなどをきっかけに、働く時間の使い方について考えるようになった人は多いと思います。時間を有効に活用する手立てとして「タイムマネジメント」への関心も高まっていますが、今回はまず、水口さんがタイムマネジメントを意識するようになった経緯から教えてください。

水口 私がタイムマネジメントという言葉を意識し始めたのは、約20年前のことです。当時、私はエンジニアとして、かなり多忙な日々を送っていました。今では考えられない話ですが、当時は長時間労働が当たり前だという人が多く、私も同様でした。日付が変わってから家路につく毎日で、月々の残業時間は軽く100時間を超えていました。

 それでも、私としては効率よくスピーディーに仕事をこなしている自負があり、実際、成果も上げていました。ただ、納期の異なる案件をいくつも同時に走らせていて、常にあれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、という状況。先の見えない不安と焦りから、毎日めいっぱい仕事してしまうんです。結果、心身ともに疲れ切る――この繰り返しでした。タイムマネジメントを意識するようになったのは、そんな状況に限界を感じたからです。

――残業に厳しい世の中になったとはいえ、今でも水口さんと同じ悩みを抱えるエンジニアは多そうですね。当初は、一般的なタイムマネジメントの教科書などを参考にしたのでしょうか?

水口 はい。その中では、毎朝その日やるべきことを書き出して「To Doリスト」を作ることと、そのTo Doリストに優先順位をつけることが推奨されていました。私も最初はこれをやってみたのですが、あまりうまくいきませんでした。

 To Doリストは、経験したことがある人も多いと思うので“あるある”かもしれませんが、作るだけで結構な手間がかかり、負担になります。もちろん、その日やる仕事を明確にすることはできますが、事細かに優先順位をつけることには、実はそれほど意味がないし、何よりロングスパンでの仕事の進め方を考えるうえでは、役に立ちません。

 当時の私は、常に「今のペースで納期に間に合うか」「この進め方で大丈夫なのか」といった不安に悩まされていたので、その部分を解決できるメソッドが必要でした。そこで、自分に合ったものを自力で編み出すしかない、となったわけです。

多忙を極めたエンジニアの残業時間を3分の1に減らした時間術とは?

水口和彦(みずぐち・かずひこ)

1967年生まれ。大阪大学大学院卒業後、住友電気工業に入社。自動車用ブレーキパッドのエンジニアとして、社内トップのヒット商品を開発。また、設計業務だけでなく生産技術、品質管理の実務経験を持つ。そのエンジニア時代にタイムマネジメントの研究を始め、試行錯誤の末に独自の手法を確立。これが好評を博し、ビズアーク・時間管理術研究所を立ち上げる。現在はタイムマネジメントをテーマとした研修・セミナーなどを多数実施。著書に『世界で一番ゆるい 王様の時間術 これで残業時間もゼロになる』(ダイヤモンド社)などがある。