ロシアのウクライナ軍事侵攻による衝撃は、地政学的な危険に無頓着だった欧州の欧州の民主国家を否が応でも目覚めさせた。欧州連合(EU)は対ロ制裁やウクライナへの武器供与を巡り、まれにみる迅速さで米国と足並みをそろえ、世界を驚かせた。ただ、こうした欧州の当初の反応を、軍事・経済の安全保障に関する長期戦略へと落とし込むにはこの先難関が待ち構える。EU首脳は先週、ロシアの拡張主義を封じ込めるため、国防費の増額とロシア産エネルギーへの依存解消を目指すことで合意した。足元では、どれだけのスピードで取り組み、かつ誰が費用を手当てするのかに関する議論が進行している。急ピッチの進展を阻む障害となるのは、EU内での各国の温度差と経済的な打撃への不安だ。とはいえ、ウクライナでの戦争への恐怖に加え、ウラジーミル・プーチン露大統領は欧州の秩序にとって脅威だとの認識で各国が一致していることを踏まえると、方向性は定まったとの指摘は多い。