ジャネット・イエレン米財務長官は感謝祭の祝日を直前に控えた昨年11月、政府高官らと共にホワイトハウスのシチュエーションルーム(危機管理室)にいた。ウクライナ国境に兵力を集結させているロシア軍への対応を協議するためだった。会議に参加した諜報(ちょうほう)顧問や国防当局者、外交官らは、ロシアが侵攻の準備を進めているとの結論に至った。イエレン氏は、欧州など各国の担当者に連絡して経済制裁に備え始めるよう促すと述べた。会議の事情を知る関係筋が明らかにした。同氏は連休明けから、対応を調整するために電話をかけ始めた。この会議は、西側諸国が主要国に対して異例の金融制裁を始動する起点となった。ロシアとウクライナの戦争において、経済制裁は巨額の武器支援とともに西側の対応の最前線に位置づけられた。この戦略の意図は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国とロシアが直接衝突する事態を避けつつ、ロシアがたとえ軍事的に勝利したとしても確実に大きな代償を負うよう、ロシア経済を崩壊させることにあった。