国際情勢を見るのに、地政学の視点は欠かせない。地理・世界史・民族。これら3枚のレンズを通すと、各国固有の事情が浮かび上がってくるのだ。本連載『ウクライナ危機の本質がわかる「地政学」超入門』では、最近再び脚光を浴びている地政学の基本や、地政学の観点から見えてくる各国ならではの事情をお届けする。今回は中国を見ていこう。中国の長い歴史や地理的環境を知ることで、昨今の対外政策の背景が見えてくるはずだ。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
ランドパワー・中国の覇権主義
沿岸国との衝突は「必然」?
大陸国家である中国が海洋進出をしようとした場合、沿岸国との衝突は避けられない。中国から見ると、すぐ沖に日本列島があり、九州から奄美諸島、沖縄諸島が連なる。さらには台湾からバシー海峡を挟んでフィリピンがある。
中国から見れば、これらの国々は外界への進路をふさぐ邪魔な存在であり、地政学的に見れば、尖閣諸島や南沙諸島(スプラトリー諸島)を巡る対立は必然の結果なのだ。
しかも、これらの沿岸国は、中国の“宿敵”米国と関係の深い国ばかりだ。これらの衝突は、シーパワー・米国から覇権を奪おうとするランドパワー・中国の対外政策と密接に結び付いている。
中国の覇権主義的な発想は、2000年以上前に成し遂げられた秦の始皇帝による中国統一にさかのぼるとされ、その歴史は古い。ここで中国の歴史と各種データを確認しておこう(下図)。
その長い歴史の中で、約1世紀にも及んだ列強による植民地化の時代は、屈辱だったに違いない。
次ページでは、現代の中国が推し進める戦略とそのリスクについて、地図を交えて解説する。