「シニアは勝海舟役に徹すべき」、松田公太と安宅和人が語る新たな日本Photo by Teppei Hori

タリーズコーヒージャパン創業者であり、現在、EGGS ’N THINGS JAPAN株式会社代表を務める松田公太氏。本シリーズでは、起業家であり元政治家の松田氏が、気になる人物に話を聞き(インプット)、その内容を広くビジネスパーソンへ共有する(アウトプット)。第1回のゲストは、『シン・ニホン』がベストセラーとなっている、慶應義塾大学教授でありZホールディングス シニアストラテジスト(前ヤフーCSO)の安宅和人氏が登場。複数回にわたってその模様をお届けする。今回は「シニア層の活躍が見込めない職種」「ウクライナ問題と日本のプレゼンス」について熱く語り合った。※本対談は3月2日に実施したものです。(構成/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)

50年先のことを我が事として捉えられる
30~40代が総理大臣をやるべき

松田氏松田公太(まつだ・こうた)
起業家、元政治家。タリーズコーヒージャパン創業者、EGGS ’N THINGS JAPAN株式会社代表取締役。1968年生まれ。幼少期をアフリカとアメリカで過ごす。筑波大学卒業後、銀行員を経て1997年にタリーズコーヒー日本1号店を創業。翌年、タリーズコーヒージャパン(株)を設立し、2001年に株式上場。2007年、同社社長を退任。同年、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーに選出される。2010年、参議院議員選挙当選。2016年に議員任期満了後、再び起業・経営者に。Eggs 'n Things他、飲食チェーンの運営を中心に、AIを活用したDX事業、自然エネルギー事業なども手がける。

松田公太(以下、松田) 『シン・ニホン』、出てすぐに読みました。ぶ厚い本だったので一瞬、躊躇(ちゅうちょ)しましたが、一気に読んでしまいました。

安宅和人(以下、安宅) ありがとうございます。

松田 本当に共感するところが多かったんですね。たとえば、「日本で埋もれたままの3つの才能」として、若者、女性、シニアの才能を取り上げていますよね。

安宅 はい。

松田 もちろん私も賛成で、シニア層ももっともっと活躍してもらわないといけないと思うのですが、ひとつだけ、そう思えない職種があるんです。それが政治家です。

 特に政権の中枢にいるような、実権を握る人たちは、その座を失うことをいつも恐れています。私は政治の世界に何年もいて、近くで見てきましたが、彼らはつねに不安なんです。それが今回のウクライナ侵略における、ロシアのプーチン政権のディシジョンにもつながっていると思うんですよ。

 人間って、残念ながら年を取るとともに強情になっていく人が多い。もちろん全員ではなく、人にもよりますが、ある程度の権力を握っている人はその傾向が強くなる。それは、自分の判断に対する不安でもあると思うんですよ。自分の先がそれほど長くないとなると、経験値の範囲内でしか物事を判断しなくなる。

安宅和人氏安宅和人(あたか・かずと)
慶應義塾大学環境情報学部教授、Zホールディングス(株) シニアストラテジスト。マッキンゼーを経て、2008年からヤフー。前職ではマーケティング研究グループのアジア太平洋地域中心メンバーの一人として幅広い商品・事業開発、ブランド再生に関わる。2012年よりCSO、2022年春よりZホールディング シニアストラテジスト(現兼務)。並行して2016年より慶應義塾SFCで教え、2018年秋より現職。総合科学技術イノベーション会議(CSTI)専門委員、教育未来創造会議 委員、新AI戦略検討会議委員ほか公職多数。データサイエンティスト協会創立メンバー 理事・スキル定義委員長。一般社団法人 残すに値する未来 代表。イェール大学脳神経科学PhD。著書に『イシューからはじめよ』(英治出版)、『シン・ニホン』(NewsPicks)ほか。

 また、「自分はこの先、あと10年くらいかな」と思う人と、50~60年先のことを我が事として捉えられる人とでは、判断が変わってくると思います。

 だから私は、若い人がもっともっと政治家を志すべきだし、総理大臣にしても、30代や40代でなってもいいんじゃないかということをずっと言っているんです。

 68歳とされるロシア人の平均寿命をすでに超えたプーチンが、今やっていることというのは、生きているうちに帝政ロシアの礎をつくりたい、歴史に名を残したい、という思いが強くなってしまっているように思えます。そういう人が核のボタンを手にしているという現実が、非常に恐ろしい。

安宅 たしかロシアは、6000以上の核弾頭を保有していると言われていますね。

松田 アメリカの保有数を超えて、世界でもっとも保有している。地球を何十回も滅亡させることができるレベルです。もしもっと若い人が大統領であり、自分の未来を、幼い子どもたちの未来を考えることができれば、もう少し言動が違ってくると思うのです。

 ですから、日本の政治家に関しても、私はできれば早い段階でシニア層には若い人にバトンタッチしてもらいたい。アドバイザー的に残るのはいいとは思うのですが。

安宅 勝海舟ロールに徹していただくというのはあるかと。平均寿命が伸びているので、適切な目安の判断はなかなか難しいですが、ある年齢、たとえば60歳を過ぎたぐらいなど。

松田 坂本龍馬ではなく。

安宅 はい。シニア自身は後見人としてサポートはするが、幕末では政治の最前線自体は、坂本龍馬や西郷隆盛に任せたように。