ポイントサービスで発明、対価は90億円と主張
「ビジネスモデル特許」巡る異例の訴訟に
訴状などによると、瀧元氏はエポスカードの社長だった13年秋、ポイントサービスに関する新たな仕組みを発明した。
そのサービスは1年後の14年秋から導入された。14年に特許出願したその発明で、エポスカードは数百億円に上る利益の増加が見込めるという。
瀧元氏側は丸井Gには当時、職務発明の対価を支払う規定などが存在せず、報奨金などを受け取っていないと主張する。
その上で、受け取るべき発明対価の金額を約90億円とし、今回の訴訟では、その一部である1億円と遅延損害金の支払いを求めている。
一方、丸井Gはダイヤモンド編集部の取材に対し「訴状が届いていないため、回答致しかねます」としている。
職務発明を巡っては、青色発光ダイオードの開発者でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が、勤務先の精密機器メーカー、日亜化学工業を相手取り、約8億4000万円受け取って和解した事例が有名だ。
がん免疫薬「オプジーボ」の特許を巡る訴訟では、小野薬品工業が京都大学の本庶佑特別教授への解決金や京都大学への寄付を合わせ、約280億円を支払うことで昨年和解した。
従来、職務発明を巡る訴訟は、研究開発による製品や薬などが中心だった。
だが、今回は「ビジネスモデル特許」と呼ばれる、ビジネスの方法や仕組みに先進性がある発明に与えられる特許が対象となる。知的財産訴訟に詳しい弁護士は、「ビジネスモデル特許を巡る職務発明の対価の訴訟は極めて珍しい」と話す。
丸井Gのようなサービス業では、ビジネスモデル特許が増えてきているにもかかわらず、製造業や製薬会社などと比べ、発明の報奨金に関する規定などを設けていない企業も少なくない。
今回の訴訟は、そうした実情に一石を投じることにもなりそうだ。
ダイヤモンド・オンラインでは、今回の訴えの具体的な内容や、元役員側が求める発明対価の算定の根拠について、特集『丸井 レッドカード』#1『【スクープ完全版】丸井G元役員がエポスカードを巡って古巣を提訴、異例の特許訴訟を最速解説』で詳報している。丸井Gの特異なビジネスモデルや創業家支配の実態、カード業界の序列変化なども同特集で報じていく。