廃業急増!倒産危険度ランキング#4Photo:cnythzl/gettyimages

コロナ禍で市場環境が激変した13業界について、それぞれ倒産危険度ランキングを作成した。特集『廃業急増!倒産危険度ランキング2021』(全23回)の#4では、百貨店をはじめとした小売業界を取り上げる。20社が危険水域に入った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

伊勢丹新宿店の「PCR検査“阻止令”」が波紋
三越伊勢丹HDは業績不振

 8月上旬、伊勢丹新宿店が取引先の外部社員に示した新たな「感染防止ルール」が波紋を呼んでいる。

 伊勢丹新宿店の内部資料によれば、テナントの従業員がPCR・抗原検査を受ける場合にも「ルール」を設定。「必ず検査受検計画を事前にお知らせ頂き、相談をしてください」「2人以上同時に受検しショップ運営に支障をきたすと判断される場合は、いつから休むかは(伊勢丹新宿店の)総務部に相談」と明記した上に、自主的にPCR検査を受ける場合には、「結果判明の2日前から休んでください」とルール化された。

 ある現役の伊勢丹新宿店の従業員は、「取引先従業員に対しての事実上のPCR検査“阻止令”だ」と憤りをあらわにし、「通達以降、テナントの従業員は検査が受けにくい雰囲気になってしまった。日々、感染の恐怖と闘いながら仕事をしている」と訴える。

 現場の第一線で働く取引先の従業員が新型コロナウイルス感染のリスクと闘う一方で、三越伊勢丹ホールディングス(HD)はコロナ禍による業績悪化と闘っている。

 三越伊勢丹HDの2022年3月期第1四半期決算は、総額売上高(今期から会見基準を変更、従来の売上高に相当)が、コロナ禍の影響のない前々期比69.5%の1963億円。営業利益は60億円の赤字で、四半期純利益も86億円の赤字に沈んだ。

 こうした苦境は、何も三越伊勢丹HDに限った話ではなく、全国の百貨店で共通する。

 インバウンド需要の消滅に始まり、外出自粛で客足が遠のいていることに加え、8月12日には政府・コロナ対策分科会の尾身茂会長がデパ地下の人出を強力に抑えることを政府に提言。デパ地下への風当たりが強まることで、百貨店の収益環境は一段と厳しくなりそうだ。

 ダイヤモンド編集部が作成した今回の倒産危険度ランキングで、小売業界で“危険水域”に入った会社は20社。三越伊勢丹HDをはじめ、地域の名門百貨店が多く名を連ねる。

 経営の苦境が浮き彫りになったところはどこか。ランクインした企業の顔触れを見ていこう。