品質不正問題後の「日医工」は八方塞がり、想定される今後のシナリオとは?Photo:JIJI

 昨年末、業界最大手のサワイグループホールディングス(HD)が電撃的に発表した小林化工が持つ工場のみの買収。この“奇策”に業界内では衝撃が走ると同時に、自ずと視線はある会社に向かった。「小林化工は決着した。では、日医工はどうするのか」(大手製薬関係者)。自らが引き起こした不正問題が解消するメドはいぜん立たず、再建への道筋も一向に見えてこない。工場売却で息をつなぐ可能性が業界内で囁かれ始めている。

 東芝あるいはエアバッグを手がけていたタカタのように不正を起こし、哀れな末路を辿った企業は業界・業種を問わず枚挙にいとまがない。大がかりな粉飾決算が社会的問題にもなった東芝は、タコが自らの足を食べるように有望な事業を続々と売却し、かつての総合電機の面影はもはやない。いまだに経営は迷走を続け、ここ数年はほぼ毎年トップが変わり、3月24日の臨時株主総会では半導体などを扱う「デバイス事業」を切り離し、東芝を2分割する会社提案が否決されたことは記憶に新しい。

 これに対し、リコール費用1兆円以上とも言われる前代未聞の品質問題を起こしたタカタの場合、中国企業に買収されるという結末を迎えた。各国の大手自動車メーカーと取り引きし、エアバッグでは世界2位の位置を占めていたが、つまづきの原因となったのがエアバッグを膨らます重要部品「インフレーター」。その不具合に起因する事故が相次ぎ、死者も出た。

 タカタは自らのミスを認めようとしなかったが、15年に米国政府が民事制裁金を課すことが決まり、ジ・エンド。リコールなどによって生じた最終的な負債額が1兆円を超し、民事再生法の適用を申請した。最終的には中国の有力自動車部品メーカー、寧波均勝電子に米国グループ会社を通じて買われ、現在にいたる。しかし、その後も、シートベルトの品質不正問題が発覚するなど再建したとは言いがたい状況が続く。

 翻って医薬品業界はどうだろうか。近年では深刻な問題として社会の耳目を集めた化学及血清療法研究所(化血研)の事例がある。ワクチン、血液製剤のそれぞれで国内の一角を占め、独特の存在感を放っていたが、15年に承認書と異なる手順で生産していることが発覚。当時としては最長となる110日の業務停止処分を厚生労働省から食らった。

 小林化工のように死者が出るといった事態こそなかったものの、その悪質さは群を抜く。約40年と長年にわたっていたのがひとつ。さらに発覚を防ぐため、偽の記録に紫外線を照射し、古いように見せかけるなど根深い隠蔽体質が浮き彫りとなった。結局、18年に明治HDが化血研の地元である熊本県内の企業とともに出資を行い、いまはKMバイオロジクスとして新たなスタートを切っている。