自衛隊で教わった「メンタルを崩しやすい瞬間」ワースト1

仕事や人間関係…しんどいことが多い、という人にぜひ読んでもらいたいのが、「メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る　この世を生き抜く最強の技術」（わび著）だ。読者からは「救われた」「久しぶりに響いた本」などの感想が寄せられている。著者のわび氏は元幹部自衛官としてエリート街道をひた走っていたが、上司のパワハラと早朝深夜の激務が重なりメンタルダウン。復職を果たした後、「出世ばかりが人生ではない」「人に認められるためではなく、もっと楽しく生きたい」と思い、転職。現在は外資系企業の社員として活躍している。自衛隊などの社会人経験で身につけた仕事術、メンタルコントロール術についてツイートした内容が人気を集め、Twitterを開始して2年半でフォロワーは13万人を突破、10万超えいいねを連発し、ネットメディアにもたびたび取り上げられている。仕事・人間関係で生き抜く知恵が詰まった本書の発売を記念し、わび氏と同じく元自衛官で『陸上自衛隊ますらお日記』（KADOKAWA）著者・Twitterフォロワー17万人のぱやぱやくんと特別対談を実施。陸上自衛隊のメンタル教育について語り合ってもらった。（取材・構成／川代紗生）

「強い自分」を目指す人ほど心が折れやすい

──お二人とも、陸上自衛隊で幹部自衛官として働かれていましたが、自衛隊で学んだことの中で、特に印象深いものは何ですか？

わび：『この世を生き抜く最強の技術』という本のタイトルの通り、自分の心身を守ることや、危機管理の方法に関しては、本当に多くを学ばせてもらったなと思います。

　運悪くパワハラ上司のもとで働くことになった結果、メンタルダウンして働けなくなってしまった時期もあったのですが、そのひとりを除けば総じて、いい先輩や同僚たちに恵まれました。

　自衛隊は長い歴史の中で、トライアンドエラーを繰り返し、トラブルが起きないような仕組みを構築し続けてきているので、非常に熟成した組織だと思います。学ぶことは本当に多かったですね。

ぱやぱやくん：自衛隊って、本当におもしろいですよね。こうして本を書いたり、発信したりしているのは、世間のイメージとは違う、自衛隊の意外な一面について知ってもらえたらいいな、という気持ちが大きいんです。

「陸上自衛隊」と聞くと、災害派遣の場面などで活躍する姿を想像する人が多いかもしれませんが、もちろん、所属している人たちにも「オフ」の姿があって。いかにも「ますらお」な雰囲気が漂うバケモノみたいに屈強な自衛官もいれば、一般の人と同じように、がんばりすぎて潰れてしまう自衛官もいる。

わび：自衛隊は、肉体もメンタルも鍛えたゴリゴリに強い人たちの集まり、みたいなイメージもありますが、そういう人ばかりじゃないですよね。

ぱやぱやくん：全然。むしろ、自衛隊ほどバリエーション豊かな組織も珍しいんじゃないかと思います。あとは、私にとって印象深かったのは、「強い自分」を目指す人ほど心が折れやすい、ということです。

　自衛隊って、「強い自分になりたい！」と思って入隊をしてくる人が比較的多いじゃないですか。「今までの情けない自分とは決別したい」と、少年漫画の主人公みたいな気持ちを持って入隊する人もいる。そうして「どんなときでも動じない」「常に堂々としている」「決して弱いところは見せない」といったメンタルの強さを求め、どんどんストイックになっていく。

わび：それ、まさに私のパターンですね（苦笑）。弱音を吐かないことを美徳と考え、残業やパワハラでも無理をして働き、大丈夫なふりをし続けていた

　倒れたあとですら、「この程度のパワハラでメンタルダウンするなんて情けない」と、しばらく自分を責め続けてしまっていましたから。

ぱやぱやくん：そうなんですよね。強さを求める真面目な人ほど、「せっかくここまでがんばって自分を鍛えてきたのに、いま弱音を吐いたら、また元の弱い自分に戻ってしまう」と思い込んで、ある日ポッキリと折れてしまう。