平成ノブシコブシの徳井健太は、長らく相方の吉村崇に比べ「じゃない方」芸人と呼ばれてきた。華麗に売れていく相方と何度も大げんかしたという徳井は、人気番組「ゴッドタン」の「腐り芸人セラピー」という企画で「悟り芸人」として覚醒する。彼のお笑い論・芸人論は、仕事にもがき、葛藤してきた者にしか書けないものだ。(コラムニスト 河崎 環)

人事のうわさが大好きな会社員たち

平成ノブシコブシの徳井健太氏平成ノブシコブシの徳井健太氏(写真提供:(c)新潮社)

 勤め人にとって、春は胸騒ぎの季節だ。人事異動のうわさ、内示、異動の発表、そして新年度がスタートする。誰がどんなポジションにつくのか、社内のSlackやグループLINEや飲み会や喫煙室でのうわさとなり、あちこちで答え合わせが行われる。

「あいつが初発(同期入社の間で最初に出世すること)か~!」

「なんでアイツなんだろうな~、チキショ~」

「田中部長も、役つかなかった(=役員にならなかった)な」

「まさか子会社に出されるとはなぁ。同期に山田さんがいるから、あの期の人はもう勝ち目がないんじゃない?」

「佐藤さん、初のたたき上げ女性役員だもんな。あの鉄壁のキャリアには勝てるわけないって」

「ウチのあの次長は?」

「XX年入社だろ……もう役職定年コースの人だね」

「そういやA社、早期退職始まるってうわさ、聞いた?」

「マジか! 俺もホント、50代どうするかなぁ……」