これからのビジネスマンも、
人生は2回やってくる
伊賀 アスリートの方は、人生(キャリア)が2回あるといわれますよね。
そういう意味で、為末さんは引退後もさまざまなこと、独自のことをなさっていて、興味深く拝見しました。
世界大会において、トラック種目(400メートルハードル)で日本人初となる2つのメダルを獲得した元プロ陸上選手。
(撮影:公文健太郎)
為末 ありがとうございます。そうですね、アスリートは選手としての人生、そしてその後の人生、人生が2回あるということをよく言われます。
僕たちは競技人生では勝利設定がとてもハッキリしていて、目標との距離感も明確なんです。そんな環境で生きてきた選手が引退するときに悩むのは、社会に出たときに、勝利条件の設定が明確ではないということです。
お金持ちになりたいのか、家庭を大事にしたいのか、今まで見えていたような明確なゴールと同じようなものを社会にも探してしまうというか。
伊賀 自分の位置が把握しにくいってことですよね。
世界ランキングやタイムという明確な基準がアスリートの世界にはありますが、引退すると、そこまでハッキリしたものはそうそう見つからないですよね。
偏差値で大学を選んで来た学生が、人気ランキングの上位にある企業に就職したがるのも、自分の基準が見つけられないからなんです。
アスリートの方は、最初の人生での基準が一般の人に比べても相当に強烈な分、2回目の人生での勝利設定が難しいのだと思います。
為末 はい。僕自身も、今はそれを設定する途中でもあるんですよね。
割と乱れ打ちのようなところもありますが(笑)。でも、そういうときこそ「自分で選んでいく」ことが重要なんじゃないかって思うんです。