新型コロナとともに、定着したかに見えるテレワーク。多くのビジネスパーソンが、WEB会議やチャットツールの使い方など、個別のノウハウには習熟してきているように見えるが、置き去りにされたままなのが「テレワークのマネジメント」手法だ。
これまでと違い、目の前にいない「見えない部下」を相手に、どのように育成し、管理し、評価していけばよいのだろうか? その解決策を示したのが、パーソル総合研究所による大規模な「テレワーク調査」のデータをもとに、経営層・管理職の豊富なコーチング経験を持つ、株式会社セルムエグゼクティブコンサルタントで元パーソル総合研究所執行役員の髙橋豊氏が執筆した「テレワーク時代のマネジメントの教科書」だ。
立教大学教授・中原淳氏も、「科学的データにもとづく、現場ですぐに使える貴重なノウハウ!」と絶賛する本書から、テレワーク下での具体的なマネジメント術を、解説していく。

部下を感情的に怒らないためのちょっとしたコツPhoto: Adobe Stock

怒りの感情が湧いたら、最初の6秒を待つ

 前回、オンライン時代の叱り方のコツをお話しました。

 ただ、タイミングを逸することなく叱るのがベストとはいえ、自分の感情が落ち着くまでの時間だけは必ずキープしてください。勢いに任せて叱りつけ「なんでできないんだ!」「なんでこんなことになったんだ!」と怒鳴りつけても、相手の心には届きません。人間性を否定するなど一線を越えた発言をしてしまえば、ハラスメントとして訴えられることもあり得ます。

 誰しも一度は経験していることかと思いますが、相手からきたメールなども、自分の感情が乱れているとまったく違った意味に受け取ってしまうことがあります。感情の奴隷になって動き出してしまうと、取り返しがつかないということは肝に銘じておきましょう。

 そして、どんなに強い怒りの感情だとしても、怒りのピークは長くて6秒といわれています。

 ですから、強い怒りの感情が湧いたら、まず最初の6秒を待ってみましょう。

 またその間に、怒りに点数をつけたり、頭の中で数を数えたり、その場から離れてスポーツのようにタイムをとったり、深呼吸をしたりすると、怒りに任せた行動を防ぐことができるようになります。

大事なのは叱った後のフォロー

 叱った後に、すっかり忘れてしまうマネージャーもいますが、必ずフォローしてください。部下は上司が想像している以上に傷ついていることもあり、フォローしないことで信頼関係が崩れてしまうこともあり得ます。

 その場で、改善策、防止策を話し合って決めるはずなので、その後、きちんと実行できているのかどうか、できていたら褒めてあげることも大切です。顔が見えず、落ち込んでいるのかどうかすらわからないテレワーク下では、なおさら、叱った側から声をかけてあげることが必要です。