新型コロナとともに、定着したかに見えるテレワーク。多くのビジネスパーソンが、WEB会議やチャットツールの使い方など、個別のノウハウには習熟してきているように見えるが、置き去りにされたままなのが「テレワークのマネジメント」手法だ。
これまでと違い、目の前にいない「見えない部下」を相手に、どのように育成し、管理し、評価していけばよいのだろうか? その解決策を示したのが、パーソル総合研究所による大規模な「テレワーク調査」のデータをもとに、経営層・管理職の豊富なコーチング経験を持つ、株式会社セルムエグゼクティブコンサルタントで元パーソル総合研究所執行役員の髙橋豊氏が執筆した「テレワーク時代のマネジメントの教科書」だ。
立教大学教授・中原淳氏も、「科学的データにもとづく、現場ですぐに使える貴重なノウハウ!」と絶賛する本書から、テレワーク下での具体的なマネジメント術を、解説していく。

テレワーク時代に<br />部下を叱る時の<br />6つの鉄則Photo: Adobe Stock

直接顔を合わせない、オンラインでの叱り方

 テレワークになっても、「叱り方」は根本的に変わりません。大事なのは以下のことです。

・大勢の前で叱らないこと
 複数が参加しているオンライン会議で個人を叱ると、必要以上にメンバー全体に影響を与えてしまいます。対面であっても叱るときは人前ではなく1対1でと決めているマネージャーは多かったと思いますが、テレワークという心理的安全性が下がりやすい状況だとさらに意識する必要があるでしょう。

・事実をベースに叱る理由を明らかにすること
 何がどう悪かったのか、叱られる方がわからなければ意味がないどころか、信頼関係が崩れてしまいます。たとえば就業規則に違反したのであれば規則や処罰を見せながら、客先に送ったメールに無礼があったのであれば、そのメールの文面をZoomの画面共有ツールなどで映し出して、同じものを見ながら指摘します。

・「結果が出なかった」ということを叱らないこと
 こちらも対面時代と同じですが、結果だけを見て叱るとチーム全体にチャレンジを避けようとする空気が生まれてしまいます。とくに、少ない情報から周囲の動きを探るしかないテレワーク下では、こうしたことにみんなが必要以上に反応しがちです。プロセスを細かく見て、頑張ったところは褒めつつ、ミスにつながった原因を指摘するように意識してください。

・タイミングを逸しないこと
 時間がたってから叱ると本人にきちんと理解してもらえなかったり、すでに間違った認識の上で次の作業が進んでしまっていたり、または昔のことを掘り返しているようで悪印象を与えてしまったり……と良いことはありません。一番効果が高いのは、ミスなどが発覚したその場で指摘することです。

・端的に指摘すること
 長々お説教をすると叱る側もつい感情的になり、言わなくてもいいことまで言ってしまうことがあります。感情を交えず、必要なことだけを伝える、と決めてから臨んでください。

・改善策を話し合うこと
 本人の行動を整理し、なぜこのような事態が生じたのかを分析し、二度とこのようなことが起きないようにするにはどうしたらよいのかを考えさせます。ここは「叱る」とはモードを変えて、建設的な話し合いをすることが大切です。