Photo by Yoshihisa Wada
スーパーマーケット激戦区といわれる埼玉県で、存在感を放っているのがヤオコーだ。同業他社から店づくりや出店戦略をベンチマークされるなど、業界内での注目度は高い。2025年10月には持ち株会社であるブルーゾーンホールディングスを設立し、M&A戦略も進めている。インフレで経営環境の厳しさが増す中で、どのように成長させていくのか。特集『スーパー新戦争』の#6では、ヤオコーの川野澄人社長のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
6%の人件費上昇をどうカバーするか
新規出店に頼らない成長戦略とは
――インフレによる食品や人件費、地代の上昇が進む一方で、郊外では高齢化と人口減少に歯止めがかかりません。小売業にとっては、売上高を伸ばすのが難しく、コストはジリジリと上がる厳しい環境だと思います。現状をどう捉えていますか。
インフレはこれからも続く想定です。インフレによって一品単価は上がるので、その点ではプラスですが、一方で経費も上がっていきます。特に最低賃金が年間約6%のペースで上がっています。私たちは、パートナーさん(編集部注:パートやアルバイト)の力を得て運営していますので、その賃金が上がっていくことを見据えて、商売をしなくちゃいけません。もっとも、インフレ率は2%程度なので、人件費の6%上昇分はカバーできません。それをどうカバーしていくのかが、スーパー各社の勝負どころになるのかと思っています。
当社としては、まだシェアを獲得できる余地がありますので、シェアを取ってトップライン(編集部注:売上高)を伸ばしていきたい。ただし、それでも最低賃金6%分をカバーできるかというと、なかなか難しいと思います。その課題に加えて、粗利をどう高めていくかを考えなくてはいけません。売上高を伸ばし、粗利を高めるために生産性を上げていく。今はこの合わせ技で6%をカバーしていくことになります。
――これまでトップラインを伸ばす最大のドライバーは、新規出店でした。数年前までは建築費や土地代、金利も低く、右肩上がりの売り上げ計画は立てやすかったと思います。それが、今は出店コストが上昇し、新規出店は難しくなっています。成長戦略を描きにくくなっているのではないでしょうか。
1店舗出店するための投資額は、確かに大きくなっています。良い立地は取り合いになり、地代も上がっています。当社の出店は、都市部と郊外のミックスです。郊外では、地代と人件費は相対的に安い。郊外である程度の売り上げが見込めるところには、店を出していこうと考えています。もちろん将来を見据えると、人口は増えていかないので厳しい環境になると思います。
一方で、都市部の人口は増えています。地代・家賃も当然高い。したがって売上高が相当高くなければ回収はできません。ただ、当社ではそういう立地も積極的に狙っていくつもりです。
新規出店でトップラインを伸ばしていくことは、各社に共通して難しくなっていると思います。当社では、そんな状況を踏まえて、やはり既存店(編集部注:出店から12カ月以上経った店舗)の売り上げを伸ばしていくことが、最も大事だと捉えています。既存店の売上高が伸びているかは、今ヤオコーでお買い物してくださっているお客さまの満足度が上がっているかどうかのバロメーターです。したがって、既存店の改装は積極的に行います。よりベストな状態のお店で、お客さまにお買い物に来ていただけることを目指しています。
――2026年3月期のヤオコーの店舗に対する投資予定額は約368億円。そのうち新規出店に対して204億円、既存店活性化向けに97億円を見積もっています。新規出店が難しくなる中で、この割合は変わっていくのでしょうか。
基本的には変わりません。ただし長い目で見ると、毎期、新たに出店することで既存店の数は増えていきますので、既存店の改装投資は増やさざるを得ません。今後、現在の年平均6~8店の新規出店が維持できるか分からないことを考えると、新規出店の投資額の割合は、薄まっていくのだと思います。
――新規出店は、ヤオコーは国道16号線の外側を中心に出店してきました。今後、内側にどれだけ出店するのかが注目されています。内側への出店はどのように考えていますか。
人が多いところで商売したいというのは、どこも同じだと思います。
ヤオコーは、鮮魚や肉、青果などの生鮮食品と総菜に対する同業他社からの評価が高く、「同じ商圏に出店してほしくない店」として必ず名前が挙がるほど警戒されている。そんなヤオコーが都市部への進出を強化し始めており、同業他社は戦々恐々としている。スーパー業界では、都市向けの小型スーパーが勢いを増しているが、ヤオコーはその動きをどう捉えているのか。川野社長に、さらに話を聞いた。







