円安のメリットデメリットPhoto:PIXTA

円安が急速に進行しても、日本銀行は金融緩和を続け、円安は日本経済にプラスであるとの姿勢を崩さない。果たして、それは本当なのか。日銀のレポート、過去の円相場と輸出動向の関係などから検証した。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

日本は「成熟した債権国」から
「債権取り崩し国」へ

 ドル円相場は断続的に高値を更新し続けている。3月28日には日銀の指値オペ通告を受け、「日本銀行が円安を容認した」との思惑が先行し、さらに円売りが加速した。

 筆者は2012~13年を境に観測されるようになった「貿易黒字の消滅」がドル円相場の下支えに寄与してきたとの基本認識に立ち、現状は「貿易赤字の定着(ないし拡大)」がドル円相場を押し上げる段階に入ったと考えている。

 それは「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」に歩みが進んでいる可能性を示唆するものだ(下表参照)。

 パンデミック(世界的大流行)や戦争を背景とする広範な資源価格上昇が、発展段階説における時計の針を早めてしまったという可能性をどうしても感じてしまう。

 資源価格上昇を背景とする交易条件悪化は、資源輸入国である日本から資源産出国への所得流出である。程度の議論はあるにせよ、円安がこの状況を悪化させる相場現象であることは間違いない。

 しかし、こうした状況においても黒田東彦日銀総裁は「円安が経済・物価にプラスとなる基本的な構図は変わっていない」との基本姿勢を崩していない。これが円売り安心感を強めているのが本稿執筆時点の状況である。

 黒田総裁が言うように、日本経済にとって円安はプラスなのか、そのメリットはデメリットを上回るのか。次ページ以降検証してゆく。