決められたポジションに経験者を登用する官公庁の中途採用は、いわゆる“ジョブ型”の雇用形態に近い。任期は3年前後が多く、近年では採用したプロ人材の登用で変化が起きている自治体も増えているそう。

「奈良県生駒市が募集した『教育指導課教育改革担当』に副業で入職したのは、千葉県で教育関連事業を行う経営者の女性でした。彼女は教育改革担当者として、コロナ禍でも安全に平和学習を行うため、市内の小学校で広島への“オンライン修学旅行”を実施するなど、さまざまな取り組みを行っています」

 そのほかにも、大阪府四條畷市ではまちづくり分野に詳しいプロ人材を副市長に登用し、転入が転出を上回る社会増を11年ぶりに実現させた例も。官公庁に入ったプロ人材の萌芽が芽吹きはじめているという。

 水野氏によると、任期付きの契約職員や副業人材なので、“生涯の仕事”として応募する人はあまりいないのも特徴だという。それでは、どのような人々が求人に応募し、働いているのだろうか。

「20代から50代まで、幅広い年齢層の方が応募しています。自分の培ったスキルで地方創生に貢献したい、自身のキャリアを“行政”という別のフィールドで試したい、という志望動機の人もいます。ただ、彼らはもともと公務員を目指していたわけではなく、求人サイトに掲載された採用情報を偶然見て、トライする人がほとんどですね」

 後述する神奈川県藤沢市のように、人気の求人には応募が殺到するケースも少なくない。京都市の都市ブランディングや企業誘致に携わる求人に1648名の応募が集まったが、採用の枠はたった2人。書類や通常の面接だけでの見極めは困難になり、ディスカッションも取り入れた採用選考が実施されたという。

「2021年に募集した藤沢市の『DX戦略推進プロデューサー』という職種には422人の応募があり、2人が入庁しました。業務内容は、市庁舎内の働き方改革のDXや、まちづくりのDXに関するアドバイザー職。入職者のうちの1人は、湘南キャンドルの点灯ボランティアに参加して地域貢献に目覚め、その日のうちに求人を見つけて応募したそうです」