新NISAはそう遠くない将来に、おそらく廃止される?

 また、2階部分でも、一般NISAでは認められているレバレッジのかかった投機的なしくみを持つ投資信託の購入は、認められていません。

 なぜ、このようなわかりにくいしくみにしたのかというと、私はおそらく金融庁の意向として、当初期待した使い方から大きくかけ離れた一般NISAを、2023年の投資可能期間が満了した時点で廃止にしたかったのではないかと考えています。

 しかし、現状において一般NISAを通じて上場株式を買い付けた資金がかなりの額になっています。

 このまま一般NISAを廃止したら、当然のことですが証券市場から資金が流出します。それを懸念した証券業界から一般NISAを廃止にしないで欲しいという強い要望があり、妥協の産物として今回の新NISAが生まれたのではないでしょうか。

 もしそうだとしたら、新NISAはそう遠くない将来に、おそらく廃止されるのではないかと考えています。

 その一方で、おそらくつみたてNISAの制度改正がさらに行われ、より個人にとって使い勝手のいい設計になるはずです。折しも、岸田内閣が誕生してから、にわかに金融所得課税の強化が現実味を帯びてきました。現在、預貯金を含む金融商品から得られる収益に対する税率は20%ですが、これを諸外国並みの30%に引き上げるというものです。そして、おそらくそれは実現の方向に進むでしょう。

 仮に、金融所得課税が強化されたら、懸念するべきは日本から、より税率の低い国へのキャピタルフライト(資本逃避)です。それだけは避けたいところですから、金融所得課税の強化と引き換えに、つみたてNISAをより使い勝手のいいものに見直してくる可能性は、十分に考えられます。

 一例を挙げるとしたら、今の非課税枠である年間40万円を60万円にするとか、あるいは投資可能期間を撤廃して、制度の恒久化を図るといったことが挙げられそうです。

 このように考えると、新NISAとつみたてNISAのどちらを選ぶかという問いに対する答えは明確で、前述したようにつみたてNISAの一択でいいということになるのです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。
つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、
個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。
口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。