「ブラック企業に潰されるくらいならすぐに逃げろ」という言葉の罠

もう一度、タイムラインを探す。やっぱり、働くことは全然楽しくなくて、働いている時間は全部無駄で、プライベートを充実させるために「耐える」時間でしかないというような趣旨のものばかりだ。

「働くのって楽しいよ!」的なポジティブなものも中にはもちろんあったが、ごくわずかだった。あるいは、バズっていなかった。流行っている考え方ではないのだろう。

いや、わかる。辛い仕事があるのはわかる。

ブラック企業で、社員を追い詰めるひどい会社があるのもわかる。パワハラやセクハラで追い詰められてしまう人がいるのもわかる。

実際、私の友人でも仕事があまりにきつすぎてやむをえず休職した子がいた。生理が止まった人もいた。私自身も一時期、といっても社会人になってしばらくしてからのことだが、働きすぎて体調を大幅に崩し、動けなくなってしまったことがある。そういうのって、本当に辛いんだよな。物理的に何もできなくなって、動けない自分をまたさらに責め立てたくなってしまうから。

そうだ。その通りだ。無理して働いたら自分のためにならないし、自殺したいほど辛いのなら、すぐに仕事を辞めるべきだと思う。

いや、わかるよ。わかるけど。

わかるけど、でも、「死にたいほど辛くなったら、自分を守るために辞めよう」っていうのと、「頑張って仕事しなくてもいい」っていうのは、違うんじゃないの?

そう思ってしまったのだ。

なんだか、「ブラック企業に人生を潰されるくらいならすぐに逃げたほうがいい」という正論の裏に、「頑張りたくない」という本音が見え隠れしているような気がした。

言っていることは全部正論だし、そういう言葉に励まされる人がいるのも理解出来るのだけど。

でも、なんか、なんだろう。

働くのってめちゃくちゃ楽しいよって、最高だよ、よかったね、やっと社会人だよおめでとうって、始まりのこの日くらい、私は言ってあげたいなあ。

働くのは辛いし、きついし、死にたくなることも自信をなくすことも、悔しくて涙が溢れてきてしょうがないときももちろんあるけど、それでもそれだけがむしゃらに頑張れたときの喜びっていうのは、何にも替えられないものなんだって、私は言ってあげたい。