どんな失敗も先へ進むための「学びの体験」になる

 チャレンジをすれば、四年間はやはり失敗を繰り返します。私もそうでした。

 そもそもたくさんの仕事に失敗してから家業に戻っていますし、立ち上げたプロジェクトだって、失敗をしながらようやく、今の段階にまできているのです。

 あるいは、まだまだビジネスとして形になっているとはとても言えず、公表はしているものの、試行錯誤を繰り返している取り組みもたくさんあります。

 けれどもそれは失敗ではなく、あくまで成功までの「過程」なのだと私は捉えています。

 発明王のエジソンが電球を商品化するまでに、実験した失敗の数は一万とも二万とも言われますが、それらはすべて失敗ではなく、「うまくいかない方法を何度も試しただけだ」と答えています。

 それと同じで、長いチャレンジからしてみれば、どんな失敗も先へ進むための「学びの体験」なのです。だから失敗にいちいちクヨクヨせず、忍耐を楽しむことが大切なのだと思います。

 その点で私が「夢」や「目標」という言い方をせず、あえて「妄想」という言い方をしているのは、そのほうがずっと楽しいからです。

「何としてもやり遂げなきゃ」という悲壮感を持たず、純粋に「できたらさぞ、面白いだろうな」というワクワク感だけで問題に挑んでいくことができます。

 そんな姿勢で、皆が楽しく世の中を変えていけたら、とても素晴らしいのではないでしょうか。

細尾真孝(Masataka Hosoo)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。