いま中国人は中国をこう見る中島恵著『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)

「地域間の格差が猛烈なスピードで縮まっていると感じました。私は、田舎のほうに行けば、もしかしたらアリペイ(支付宝)やウィーチャットペイ(微信支付)といった電子決済サービスは使えないところもあるのではないか、なんて思っていたのですが、そんなところは一切ありませんでした。どこでも使えて、とても便利です。

 その代わり、ちょっとぜいたくな話ではありますが、地方ならではの面白みや特色はだいぶ減ってきていると感じました。初めて訪れた瀋陽や済南といった都市は、上海と変わらないというと大げさですが、どちらにも巨大なショッピングモールがあって、高層ビルが林立していて、おしゃれな人が大勢いました。こんなことを言うとおかしいかもしれませんが、これまではずっと海外旅行に目が向いていたから、国内の発展度合いはニュースなどでしか知らなかったし、あまり国内に目を向けようとも思わなかったのです」

 コロナ禍をきっかけにじっくりと国内旅行を楽しみ、自国の変化に気づいたという男性。さまざまな場所を訪れる中で、特に気に入ったのが、東北部の遼寧省瀋陽市だったという。

「私はこれまで東北部にあまりいい印象がなかったのですが、瀋陽の地元料理はとてもおいしく、人々のマナーなどもとてもいいと思いました。接客で不愉快な思いをしたことが一度もなかったんです。

 旅行好きな方ならお分かりになると思いますが、旅行をしていて最も不愉快に感じるのは、嫌な人に出会ったときです。接客などでもし1回でも不愉快なことがあると、その都市全体のイメージが悪くなり、もうそこには行きたくなくなります。逆に、とてもいい人に出会ったり、いい接客を受けたりすると、その都市のことがすっかり気に入ります。これは海外旅行でも同じですよね。

 ある都市の高速道路の係員の態度は最悪でした。まるで80年代の国営レストランの店員のような感じ。二度と行きたくないと思いました。でも、自分がそう感じたということは、他では不愉快な経験をほとんどしなかったということです。以前に比べて、中国のサービスの質が上がっている証拠だと思います」