売れた日本発ビジネスコンテンツの共通点とは?!
佐々木 こんまりさんと共通点があるなんて、嬉しいです。
『人生がときめく片づけの魔法』の、一つひとつのモノには魂があって、本当に大切なものを手元においておくミニマルな暮らし、という考え方は日本ではずっと昔から大切にされてきたことですよね。それが世界に出ていったとき、とても新鮮に受け取られて、凄い現象になりました。『伝え方が9割』の、相手のことを想像して伝えるという、これも日本に昔からある「相手のことを(おもんばか)慮る文化」があって、それが海外に出ていったとき、新鮮に受け取られて、本を読んでくれる人がいる。
もともと日本にあって、先祖から受け継いできたものを世界に持っていく。そうすることで世界に喜んでくれる人がいた。そこも共通ですね。
こんまり 本当にそうですね。
佐々木 ところで、僕は『人生がときめく片づけの魔法』を読んだとき、コピーライターとして悔しい、と実は思ったんです。どうしてかというと、こんな日常にある当たり前でみんながやっていることを、「ときめき」というコトバを使うことで、こんなにも変えられるのか、と感じたからです。
しかも、片づけを変えられるだけではなく、人生を変えられるんですよね。単純に家がきれいになっていくということだけではなくて、その人の人生さえも、よりときめいていく。理想の人生に、より近づいていくことができる。すごいな、と。
片づけって、毎日絶対にやることですし、人類がずっと脈々とやり続けてきたことです。ありふれたところから何かを発見するって、ものすごく難しいと思うんですよ。
ところが「ときめき」という判断軸で、劇的に変わった。ガラッと変わってしまった。本当に魔法をかけられたみたいに変わっていく。すごいな、と。僕には、こんな本は絶対に書けないと思いました。
この「ときめき」という判断軸は、どうして生まれたんですか? それこそ突然、降ってきたりしたんでしょうか。
こんまり 「ときめき」という言葉ができあがる前の段階で、メソッドのベースのようなものはあったんです。それは、捨てるものではなくて、残すものを選ぶことが大事だ、ということでした。高校2年のときに見出した法則だったんですね。片づけをするときに、捨てるものにフォーカスしていても幸せにはなれないんです。そうじゃなくて、持っていて嬉しいものとか、好きなものを片づけの中で選んでいく。そういう感覚を大事にしていったほうがいいんだ、と。
後にそれを片づけコンサルタントとしての仕事に生かしていって、「ときめき」という言葉に出会ったんです。お客さまと片づけをしていて、「それ好きですか」「持っていて嬉しいですか」と聞いても、お客さまはなかなか選べなかった。「好き?うんまあ、うーん」みたいな。「まぁ好きといえば好き」とか。
そんなふうになんだかもやもやしていたときに、本当に急に思いつきで「それを持っていて、ときめきますか」と言った瞬間、「いや、ときめくか、と言われたら、ときめかないです」とすぐに返事が戻ってきて。
佐々木 なるほど。
こんまり びっくりしたんですが、「ときめき」という言葉が出てきた瞬間に、お客さまの判断スピードがバシバシ変わっていって、あっという間に片づけが終わるようになって。
そのときに「ときめき」か!と思ったんですね。以来、「ときめきますか」と言うようになって、「ときめき」で選んでもらうようになったんです。だから、「ときめき」という言葉は、本当に降ってきた、ということかもしれませんね。
佐々木 そのコトバが、まさに人間の本質を突いたんでしょうね。だから、グローバルでも支持された。どんな国でも、どんな人種であっても片づけはしているし、おそらく数千年前でもしていたし、未来もしているはず。
言ってみれば、こんまりさんのメソッドは一つのバイブルのようなものだな、と僕は勝手に感じています。
そのメソッドは、最初から多くの人に知ってもらいたかったのでしょうか。
こんまり そうですね。『人生がときめく片づけの魔法』は、書こうと思ったときから「日本の片づけを終わらせる」という目的を持っていたんです。なぜかといえば、このメソッドを使った片づけが終わったあとのお客さまの変化が、本当に強烈だったからです。片づけが終わった瞬間から、「もっと早くこのメソッドで片づければよかった」と1人残らずお客さまがおっしゃいました。そして、お客さまがお客さまをどんどん紹介してくださった。この片づけの仕方を本当に知ったほうがいいよ、と。
そのお客さまの熱量の大きさがあって、またお客さまが増えて半年以上も予約をお待たせすることになって、これは本にしないといけない、と考えるようになったんです。片づけって、本当にすごいんだという確信を深めていく中で、どうしてもたくさんの方に伝えたかったんです。
*次回、対談第2回は「なぜ中国で日本のメソッドが支持されたのか」の予定です。
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasaki