転勤や異動、転職などで、この春から新しい職場で働いているという人もいらっしゃるでしょう。新しい職場に溶け込むうえで重要なのが、人間関係の構築です。シリーズ累計131万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんに、新しい上司や部下と円滑にコミュニケーションを取れるようになる「伝え方」を教えてもらいました。(構成/伊藤理子)

「新しい職場に溶け込む」伝え方のコツ

人間関係の良し悪しは、仕事へのモチベーションを大きく左右するもの。例年この時期は、新しい環境になかなか馴染めず「前の職場のほうがよかった」「もう辞めたい」と悩む人が増える時期です。

一方で、「社内のコミュニケーション」に課題感を抱えている企業は多いようです。人事ポータルサイト「HRpro」の調査によると、8割近い企業が「社内コミュニケーションに課題を感じている」のだとか。

企業側も、人間関係が仕事へのやる気に影響を及ぼし、ひいては業績をも左右することを理解しています。コミュニケーションを少しでも円滑にするため、各社さまざまな取り組みを実施していますが、実はコミュニケーションの課題も、「伝え方」の技術を使うことで解消することができます。

ぜひ上司、部下と円滑にコミュニケーションが取れる「伝え方のコツ」をつかんで、職場環境をより良くしていきましょう。

上司と円満な関係を築く「伝え方」

【Case1】社内システムの使い方を教えてほしい

勤務先が変われば、社内システムの仕様も大きく変わります。しかし、マニュアルだけでは理解しきれない場合も。使い方がわからないと仕事に支障をきたすおそれもあるので、上司に質問したいところですが、

×「社内システムの使い方を教えてください」

とストレートに伝えるのは避けたいもの。もちろん、この伝え方で快く対応してくれる上司もいるとは思います。でも内心で「今忙しいのになあ…」「バタバタしているときに、面倒くさい」などと思われてしまう恐れもあります。
こんなときは、こう言ってみてください。

〇「早く藤原さんのお役に立てるようになりたいので、社内システムの使い方を教えてもらえませんか?」

これは「相手の好きなこと」という伝え方の技術を使っています。上司の藤原さんにとって、部下が役に立ってくれるようになるのは嬉しいこと。「もちろん、いいよ。どのシステムの使い方を知りたいの?」などと言ってくれやすいでしょう。

伝えたい内容は、上記2つとも同じ。しかし伝え方の技術をもとに伝えれば、相手の印象はがらりと変わるのです。

【Case2】仕事が多すぎるので少し減らしてほしい

新しい環境で、慣れない仕事が山積みになり、すっかり疲弊してしまった…という人もいらっしゃるでしょう。慣れるまで少し仕事を減らしてもらえるとありがたいですが、

×「仕事が多すぎるので、減らしてください」

と直球で伝えてしまっては、「能力が足りないのでは」と不安に思われたり、「やる気が感じられない」とマイナス印象を持たれたりしてしまう恐れがあります。

そんな場合は、こんな伝え方をしてみてください。

〇「一つひとつの仕事のクオリティを上げたいので、業務量についてもう少し配慮していただけませんか?」

これも、伝え方の技術「相手の好きなこと」を使っています。「仕事のクオリティを上げたい」というのは、上司としては嬉しいことです。相手が好きなこと、嬉しいことをもとに伝えているので、好印象を与えるうえに上司も「イエス」が言いやすくなります。

もちろん、「こう伝えれば100%言うことを聞いてくれる」というわけではありません。ただ、伝え方を工夫するだけで「イエス」の確率をぐんと上げることができます。少なくとも、「この人はやる気がなさそうだ」と受け取られることはありません。

●今すぐ使える「伝え方」ポイント
「相手の好きなこと」…基本でありながら、最強。人に好かれる伝え方ナンバー1。「相手の好きなこと」をもとに考えるので、好感をもたれながら、こちらの希望を通すことができます。

【Case3】もっと残業したい!

「働き方改革」の一環で、残業時間に上限を設けて厳しく規制している企業も増えていますが、新しい仕事を覚えるためにもう少し残業したい、もっとバリバリ働いて早くみんなに追いつきたい…と思っている人もいるでしょう。しかし、

×「残業させてください!」

とストレートに伝えたところで、時代の流れが明らかに「残業削減」の方向にある中、「いいよ」と言ってくれる上司は少ないでしょう。
そんなときは、こう伝えてみてはいかがでしょうか。

〇「山本課長みたいに、クライアントを唸らせる企画が出したいんです。今月だけ、残業を認めてください」

これは「認められたい欲」という伝え方の技術を使っています。人は、認められると相手の期待に応えたくなるものです。「山本課長みたいにクライアントを唸らせる企画が出したい」と言われれば、山本課長もその思いに応えたくなり「わかった。今月は頑張ってみなさい」と言いやすくなります。

●今すぐ使える「伝え方」ポイント
「認められたい欲」…人は期待されると、その通りの成果を出したくなるもの。ビジネスだけでなく、あらゆる人間関係に効果絶大です。