これからの時代に必要なミッション、ビジョンとは何か？

私たちは何を大切にしたいと思うのか、
この会社は何のために存在するのか

　細尾の視点から捉えた、一二〇〇年にわたる西陣織の歴史とは、先人たちが「究極の美」を追求してきた足跡です。

　しかし、先人たちが追い求めた「究極の美」という概念は、非常に壮大かつ曖昧なものだったのだと思います。

　それを受け継ぐために、フランスのリヨンまで海外の最新技術を学びにいくとか、ジャカード織機を日本に持ち帰るとか、すべて美を守るための手段として展開されていったのです。

　でもその「美の追求」という理想や理念がなければ、時の流れには逆らえないと諦めてしまっていたのではないかと思います。

　諦めなかったから、その時代なりのテクノロジーを取り込んで、「究極の美」を新しい形でつないできたということです。

　人間が持つ美意識こそが、ビジネスの「ビジョン」ではないでしょうか。

　私たちは何を大切にしたいと思うのか。この会社は何のために存在するのか。

　自分の枠（固定観念）にとらわれていないかを意識しながら、常に自分自身を拡張していくべきです。これからの時代をつくり出していくのは、私たち一人ひとりの美意識に他ならないと、確信しています。