「相互理解」「合意形成」「スピーディな推進」が重要

 フルリモートワークで成果をあげるために、ニットが重視していることは何か――まず、メンバーが、「グループ」ではなく、「チーム」になることが必要だと小澤さんは言う。フルリモートワークなので、チームのメンバーがオフィスで顔を合わせ、終業後に一緒に食事に出かけるようなことはない。そうした就労環境のなかで、良いチームとなるための秘訣はどこにあるのだろう。

小澤 気心の知れた人たちが集まると、「グループ」として仲良くなりますが、仕事は “仲良しこよし”で終わってしまっては意味がありません。「チーム」になること、それも強いチームになって事業に貢献することが重要です。 “グループとチームの違い”は、共通した目的や目標、ビジョンを持っているかどうかです。たとえば、ニットのビジョンは「未来を自分で選択できる社会をつくる」――新しい働き方を自分たちでつくりながら、世の中における働く選択肢を増やしていこうというものです。ニットのメンバーで、このビジョンを知らない人はいません。だから、フルリモートワークでも、ビジョンを持った「チーム」として機能します。「チーム一体でお客様の力になりたい」「みんなと一緒に良い仕事をしたい」という意識が、クライアントにとっての価値を生み出します。

“フルリモートワーク”という働き方で、チームが最大の成果を得る方法

 リアル対面で顔を合わさなくても、一人ひとりの力が最大化し、すべてのメンバーが個々の強みを生かし、チームとして目標を見失わずに仕事を行っていく――そのために、ニットが重視していることが「相互理解」「合意形成」「スピーディな推進」だ。

小澤 「相互理解」というのはメンバー同士が自己開示しあって、お互いの強みや弱みといったパーソナリティを理解することです。ニットでは「ストレングスファインダー」といった診断ツールを使って、お互いのタイプを知る試みも行っています。たとえば、分析することが好きで得意な人に「いま、これがすごい人気なんですよ!」と話せば、「理由は?いつから?」などといった答えが返ってくるでしょう。戦略性の強い人には、タスクベースに落とさない仕事を渡すほうが、楽しんで取り組んでもらえるかもしれません。お互いを理解することが気持ちよいコミュニケーションにつながり、それが仕事の成果をもたらしていきます。

 コロナ禍前は、リアル対面で会話することが「相互理解」の近道だったが、フルリモートワークでは、お互いの理解までに、ある程度の時間がかかるにちがいない。だから、短時間で個々人のタイプを識別する診断ツールは、リモートワークとの親和性が高いのだろう。また、ニットでは、フルリモートワークでの「相互理解」の実現のためにさまざまな「場」が設けられている。

小澤 全メンバーを対象に開催しているオンラインの集まりに、「息抜きミーティング」があります。これは週1回30分ほどのもので、参加希望者が雑談するだけという緩い「場」で、3年以上続いています。最近始めた「ソーシャルカフェ」は、人事部がランダムに選んだメンバーで、月1回45分間の対話をする場です。さらに、オンラインのサークル活動が40ほどあります。SNS研究会やライティング研究会といった仕事に関わるものもあれば、国際結婚の会や母親の会など、プライベートを語り合うものもあります。サークル活動で親しくなり、仕事の相談につながっていくこともありますね。私たちニットの仕事は、お互いがフォローしあうことで成り立っているので、誰が、どんな人で、いま何をしているのかを知っておくことがとても大切なのです。