“フルリモートワーク”の成否を分けるものは…
フルリモートワークを成功させるための具体的な方法に注目したい。ニットが重視しているのは、「セキュリティなどの環境面」「業務の仕分け」「適切なコミュニケーション」の3つがポイントだと小澤さんは語る。なかでも、成否を分けるのが「業務の仕分け」だという。
小澤 リアル対面での仕事はコミュニケーションがとりやすいので、お互いにあうんの呼吸でフォローしあったり、隣席の人に「これをお願いします」と簡単な頼みごとをすることができます。リモートワークではそうした動きが難しいので、業務を遂行する人がきちんとしたかたちで依頼を受けるか、または「やらない」という選択をするかの判断をしなければいけません。まずは、自分が行うべき「コア業務」と、必ずしもそうではない「ノンコア業務」に分ける必要があります。さらに、「コア業務」に優先順位をつけ、「ノンコア業務」のほうは、「なくす、または、減らす」「アウトソーシングすることも含めて、誰かに頼む」に分けていきます。リモートワークの業務日報を書かせる企業もありますが、せっかくカットできた通勤時間が日報を書く時間になってしまったらもったいないですよね。日報は本当に必要かどうかを管理者が熟考し、不要だと思えば行わないのも方法のひとつでしょう。業務を細かく仕分けしていくことで、担当者不明の曖昧な案件がなくなったり、これまで見過ごしてきた無駄な業務を減らしたりすることもできます。
チームで円滑に仕事を進めるための手段として、ニットは「ワークシェアリング」「早めの報・連・相」「ポジティブなフィードバック」「働き過ぎ防止」といったことを徹底している。そのうえで、小澤さんが重視しているのは、「細かなタスク表の作成」と「丁寧なテキスト・コミュニケーション」だ。
小澤 メンバーとのやりとりがチャット中心になるリモートワークでは、重要なメッセージも大量のやりとりの中で流れてしまいがちなので、タスク表の作成は必須です。私たち広報チームでは、週に1回タスク表をつくって、メンバーが誰かに何かを依頼するときは直接にタスク表に書き入れ、終わったものにはチェックを入れるようにしています。
相手に配慮した“テキスト・コミュニケーション”もかなり大切ですね。リモートワークでは文面のやりとりが多くなりますので、それを疎んじるとメンバーのモチベーションがダウンする可能性があります。たとえば、40人が見ているチャットで叱るのは「40人いるフロアで上司から怒られているのをみんなに見られている」状況と同じなので、避けるべきです。逆に、褒めるときはみんなが読んでいるチャットで褒めるのがいいですね。また、業務の指示や質問は長文でダラダラ書くのではなく、わかりやすく、箇条書きにすることもポイントです。「HELP YOU」は、そうしたテキスト・コミュニケーションの勉強会を開くなどして、メンバー間で適切な方法を常に追求しています。