「HELP YOU」にスピーディさが求められる理由
「相互理解」を経て必要なのが「合意形成」だ。これは、上層部から下りてきた目標や業務命令に言われるままに従うのではなく、当事者意識をもって、「私にはこのような思いや考えがあるから、この仕事をここまでやります」と自分の意思で他者に伝えることだという。そうした「合意形成」が、仕事の「スピーディな推進」へとつながっていく。
小澤 「合意形成」があって始めた仕事なら、業務が滞ってしまったときに、「あなた自身が自分でやると言ったはずなのに……」と他者に言われるでしょう。相互理解をベースに、合意形成がきちんとできていると、“メンバーが逃げない・メンバーを見放さない”強いチームができあがります。
合意形成には、相手としっかり話したうえで、一人ひとりが自分自身で考えて行動するという「当事者意識」が欠かせません。これは、リアル対面・オンラインにかかわらず、仕事をするにあたって大切なことです。クライアントが「HELP YOU」を単なる“下請け”ではなく、パートナーとして見てくださるのは、メンバーが当事者意識をもって主体的な仕事を続けているからだと私は思っています。
業務をスピーディに推進していくうえで避けるべきは、仕事の進め方が分からずに、1人でフリーズする時間だ。特にフルリモートワークでは周囲に気軽に聞くことが難しくなるため、経験の浅いメンバーは1人で悩む時間が長くなる傾向がある。そうした状況を防ぐために、小澤さんが心がけているのが“スモールスタート”だ。
小澤 広報チームのメンバーには、「1人で行うものはゴールの30%でいいよ。その後で一緒に100%にしていこう!」と伝えています。1人で悩み続けた結果、長い時間かけて100%のつもりで仕上げた仕事が他者から評価されなかった――そんな経験は誰にでもありますよね。それなら、長い時間をかける前に「分からないことがあって困っています」と言ってもらうほうがお互いに助かります。上司の指示があれば、時間を無駄にせずに100%にもっていくことができますから。特に初めて取り組む業務は、何が正解かがわからないもの。まずは、スピード感を意識して、小さなゴールから始めてみる。小さなものであれば、失敗してもかすり傷で済みますし、失敗は成功の発見にもつながります。
メンバーの「相互理解」と「合意形成」を経て、ニットがスピード感を重視しているのは、「HELP YOU」のサービスが、「1カ月30時間で10万円」という、サブスクリプションによる契約であることが大きいようだ。
小澤 たとえば、ひとつの業務に15時間かかれば、その月は、残りの15時間しか別の業務を引き受けられません。逆に、2時間で終わらせることができれば、残り28時間の業務を引き受けられます。つまり、クライアントからすれば、仕事が正確かつ、速ければ速いほど依頼できる量が増えるため、「HELP YOU」の評価が上がるのです。そこが、ディレクターの腕の見せどころです。ディレクターは、スタッフたちに仕事を渡すときに、「いつまでに、誰が、何をするのか」と、具体的で細かいタスクを必ず明示するようにしています。漠然としたかたちで頼んでしまうと、特に新人のスタッフは何をしたらいいのかがわからず、かといって、速やかに周囲に聞くこともできず、フリーズする時間ができてしまうのです。