自分が勉強する「理由」と「意味」を考える

 いまここで、「勉強が進まなかった日」のことを思い出してみてください。気が散って他のことばかり考えているから。うんざりして気持ちが乗らないから。気が抜けて脱力してしまったから。

 胸が躍るような緊張感が感じられないから。根拠もないうぬぼれに浸り不平不満ばかりを口にしているから。イライラと劣等感が募り、穴の空いた風船のように心から決意が抜けていくから。とにかくやる気が全く起こらないから……。考えれば考えるほど、全て「心の乱れ」のせいです。

 逆に、「勉強がうまく進んだ日」のことを思い出してみましょう。

 ぶれることのない「どっしりした心」、雑念の混じらない「完全な心」、ふらふらしない「落ち着いた心」を持って勉強した日だったでしょう。それは「目標に向かって集中した心」のおかげです。

 誰でも訓練しさえすれば、心を目標につなぎ留めておくことが可能です。自分が勉強する「理由」と「意味」を、もう少し深く考えてみればいいのです。

「いまの勉強は、自分の人生に本当に必要なんだろうか?」
「どうすれば面白く、楽しく勉強ができるんだろうか?」
「自分の夢を叶えるために、いま何をすべきなのか?」

 私は信じています。誰でも「自分が勉強する理由」にこだわり、考え続けていれば、間違いなく「勉強する気」になるということを。

ノウハウがなくても、心さえあればよかった

 ですから、本書には「心」で勉強するために、一度じっくり考えてみるべきトピックを所々に入れておき、あなたが疲れて苦しいときに心の癒やしになるよう、「熱い声援」を詰め込んであります。誰もが感じ、経験し、悩んだであろう話を、皆さんとともに分かち合いたいのです。

 勉強の合間をみて、楽な姿勢でパラパラとページをめくってみてください。でも、絶対に一気に読み切ってはいけません。一つの章を読んだら必ず本を閉じてください。一度に一つのトピックだけを読むのです。そうするうちに、「自分が勉強する理由」をじっくりと考えることができます。それはあなた自身が「勉強の意欲」を作っていく時間です。面倒だからとざっと読んでしまうのではなく、読んでいる途中で「自分の考え」を、この本に付け加えてください。家族や友人と一緒に読んで、話し合うのもいいでしょう。

 皆さんのお力になりたいと思うあまり、あれこれ小言が多くなってしまいました。後輩たちに成功してほしいがために、いろいろなアドバイスを打ち出す、お節介な先輩だと思って大目に見てください。

 自分の話を本に書くことを、ためらう気持ちもありました。

 失敗談は恥ずかしいし、成功談は照れくさくて、できる限り隠したかったというのが正直なところです。また、学んできたことよりも学ぶことの方が多い「勉強の足りない人間」が、勉強について語ってもいいのかと思うこともありました。しかし、未熟な私の「ありのままの経験談」と「経験に基づく助言」が、誰かに「勉強する気」を起こさせ、勉強が面白くなるきっかけになればいいと思い、勇気を出してみることにします。

 勉強のやり方については、これといって教えることはありません。周囲を山で囲まれた海辺の田舎町で勉強していた私には、「秘密の奥の手」も「確固たるノウハウ」もありませんでした。ただ気持ちを引き締め、育て、つなぎ留める工夫、強い覚悟を持つ決心、夢と目標を追う切実な思いだけを持っていました。勉強する「理由」と勉強の「意味」だけにこだわり、深めました。ところが驚くことに、それだけでも勉強は十分に面白くなりました。ノウハウや特別な奥の手などなくても、心さえあればよかったのです。