元留学生の外国人従業員は、全員が正社員に

 日本に在住する外国人は、出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められた「在留資格」の範囲で、国内での就労が認められている*4 。昨今、メディアでの報道が目立つ技能実習*5 の外国人も、スズキハイテックに在籍しているという。

*4 国内で就労可能な外国人は、「就労目的で在留が認められている者」「身分に基づき在留する者」「技能実習」「特定活動」「資格外活動」などにカテゴライズされる。
*5 2010年(平成22年)7月1日施行の改正入管法によって、技能実習生は入国1年目から「技能実習」の在留資格が付与されることとなった。日本で就労する約170万人の外国人のうち、「技能実習」の在留資格で就労する外国人は約40万人。

鈴木  インドネシアやバングラデシュ出身の留学生を正社員として採用し、彼らと話をしていたら、「自分たちの国の人たちをもっと日本に来させたい、その架け橋になりたい」と。そこで、「留学はお金もかかるし、なかなか難しいから、技能実習生として来日してもらい、当社が迎え入れたらどうだろう?」と、私は考えました。早速、インドネシア出身の従業員と一緒にジャカルタに飛び、技能実習の候補者を面接しました。その次に、バングラデシュ出身の従業員とダッカに行き、同じように面接したうえで、技能実習生として当社に来ていただくことにしました。

 結果、元留学生の従業員が当社の外国人の方たちをコントロールする体制が出来上がっていき、現在は、元留学生だけではない外国人の従業員が当社のポジティブな社風を作っています。

 元留学生たちは全員が正社員で、出身国は、中国・ボリビア・インドネシア・ネパール・バングラデシュ・フィリピンの6カ国です。技能実習生は、コロナ禍でなかなか来られない状況ですが、いま現在、インドネシアから4名、バングラデシュから6名の計10名が当社に在籍しています。元留学生たちは、自国の大学を卒業していたり、自国で就職してから日本に留学していたりするので、20代半ばから後半の方が多く、技能実習生たちよりも年上です。

 

 いまでこそ、スズキハイテックでは外国人従業員が違和感なく活躍しているようだが、2015年に、ボリビアと中国出身の外国人が社内に現れたときに、日本人の従業員たちはすんなり受け入れることができたのだろうか? 鈴木さんが当時を振り返る。

鈴木 新入社員となる外国人二人に対して、入社前に私がじっくり話をしました。「日本人はあなたたちのことをすごく気にします。見えない壁を作ることもあります。それを、あなたたち自身で突破していかないと、組織に融け込めません」と。「まずは、挨拶や礼儀、自分からコミュニケーションをとることを徹底しましょう」と伝えました。また、「日本人はシャイな人も多いから、挨拶や声かけに反応しない人もいるだろうけど、決して無視しているわけではありません」と。

 日本人の従業員は、彼らが積極的に話しかけてくるので最初はびっくりしたようですが、「中国ってどんなところなの?」「ボリビアはどう?」といった雑談をきっかけにコミュニケーションが膨らんでいきました。元留学生なので、日本語が上手なこともプラスでした。やがて、ボリビア人の従業員は同僚の日本人女性と結婚し、メキシコへの赴任の際には、その女性従業員が扶養家族として当社を退職しました。夫婦で渡航したのです。総務課からすれば、「あれっ?退職者が出てしまった……」という結果ですが、「(メキシコに)奥さんを連れていきなさい」と、私が背中を押しました。外国人の就労観において、「単身赴任」は理解しづらいものですから。やがて、二人が日本に帰ってきて、奥さんも当社に戻るかもしれません。そのときは彼女もスペイン語が堪能になっているだろうし、それをもとに新たなビジネス展開もあり得るでしょう。