外国人へのアンコンシャスバイアスがない理由

 新規事業であるMEMS(微小な電気機械システム)の設備をはじめ、スズキハイテックの社内フロアには精密機器が立ち並び、開発チームのメンバーである日本人と外国人従業員が一体となって働いている。相応の技術と知見がなければ、外国人がチームに加わることは難しいようにも思えるが……。

鈴木 外国人の従業員は、入社時においては、めっき加工の知識や技術はゼロです。入社後に実際の仕事を通じて習得し、先輩たちとともに商品開発に携わっていくのです。日本人のベテラン従業員の気持ちが、外国人従業員の新鮮なモチベーションに融合し、「やれるぞ!やれるぞ!」という姿勢でチームが一丸になっていく。たとえば、インドネシア出身のペトルスさんは大学で博士課程を出て、ロジカルな考えで物事にアプローチできる力を持っていますが、めっき加工の技術については日本人の従業員が一から教えました。

 もちろん、当社の外国人は男性だけではありません。技術者として働く女性や産休・育休中の方もいます。

「外国人は時間にルーズ」「外国人は日本語が不自由」――外国人の就労で切り離せないのが、一緒に働く日本人の“アンコンシャスバイアス”だ。「外国人って○○だよね」といった偏見が仕事の壁を作り、コミュニケーションの距離を生んでいく。しかし、「HRオンライン」が見学取材したスズキハイテックの職場は日本人と外国人従業員の笑顔にあふれ、両者間のぎこちなさが微塵もないものだった。

鈴木 まず、私自身が輪の中にどんどん入っていき、外国人の方と積極的にコミュニケーションをとっています。その姿を、社内のみんなが見ているのでしょう。出身国にかかわらず、普通のコミュニケーションが普通のものとして受け入れられればいいですね。現在、当社は、138名の従業員のうち、外国人従業員が37名なので、外国人の存在が当たり前です。「外国人」は言葉上では存在しているものの、たぶん、日本人従業員の頭の中での意識は薄いでしょう。属性を気にせず、みんながそれぞれの個性にしっかり向き合っています。技能実習生たちの日本語はカタコトですが、先輩の外国人従業員に倣って、日本人に話しかけることをまったく恐れず、嫌がりません。組織に融け込もうとしている彼ら彼女たちの姿には感服します。

「外国人に対しては言語を気にしなければいけない」と考える人も多いでしょうが、日本人のみんなは、正社員の外国人にも技能実習生にも、日本語で遠慮なく話しかけます。相手がカタコトだろうと気にしない。外国人の方たちは日本語ばかりを耳にするので、日本語が自ずと上達していく。ただし、雑談レベルではない「仕事における日本語」をきちんと理解しているかどうかのチェックは欠かせません。曖昧なやりとりによる間違いや誤解は避けなければいけませんから。

 振り返ってみれば、最初に留学生の二人が入社し、彼らが積極的にいろんなことを経験したうえで後輩たちが入ってきました。いまは、そこに技能実習生も加わっているかたちで、人材登用を計画的に行っていることが功を奏していると思います。外国人従業員が一気に増えず、徐々に増えていったことが良かったのかもしれません。