“お互い”の理解と“お互い”の尊重と共有が大切
外国人を採用する際に重要なことは「理解と尊重と共有」だと、鈴木さんは言う*6 。その確かな実践がスズキハイテックの現在をかたち作っているようだ。
*6 経済産業省の令和2年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」ベストプラクティス集より
鈴木 “お互い”の理解と“お互い”の尊重――つまり、お互いの立場をお互いに分かり合うことが大切です。外国人と日本人がそれぞれ持つ宗教観や風土、文化といったものをお互いに尊重しなければいけません。そして、「手を取り合って、できることを一緒にやりましょう」というのが当社の姿勢です。理解し、尊重し、共有することをサイクルとして回していきたい。もちろん、「理解と尊重と共有」は、日本人同士でも当たり前のことです。
ダイバーシティ&インクルージョンは、さまざまな人材が集まりやすく、人事制度の運用が組織立って行われる大企業で実現しやすいとも言われる。“従業員数300人以下の製造業”であるスズキハイテックはそうした大企業ではなく、「中小企業*7 」として括られるが、中小企業ゆえの「気づき」はあるのだろうか?
*7 中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」ページ参照
鈴木 外国人を採用して良かったと思うことはたくさんあります。当社には、入社後の教育や規定について、何となく曖昧な部分がありました。日本人の従業員だけなら、それでやっていけたでしょう。でも、外国人の従業員に、“グレー”は通用しません。当社の足りなかった部分が分かり、それを日本人の採用や教育にも落とし込めるようになりました。「いままではダメだったなぁ」と、中小企業ゆえの甘さに気づいたのです。
たとえば、メンバーシップ型の雇用では、教育プランを綿密に考えたうえで適性を見ていく必要があること。産休・育休については、当社では、ネパール人の従業員が妊娠して、「あっ、これは男性の従業員も育休をとらせないとダメだ」と理解しました。外国人女性は日本に親族がいないことも多く、産前も産後も夫の力がかなり必要です。日本人だって、近親者が子育てのフォローをしてくれるかどうかは分からないわけだから、パートナーである男性に育休を取らせる必要があります。また、人手不足の中小企業では有給休暇の取得率が低くなりがちですが、特に外国人にはしっかり休めることを伝えていく必要があります。同時に、日本人の従業員に対しても計画的に有休をとっていただく仕組みや社風が必要だと思いました。