日銀は超過分を企業への貸出や運用に回させて経済成長につなげる狙いだった。しかし政策開始から5年以上経っても日銀が目指す物価上昇率2%は実現していない。一方、2016年3月期のメガバンクの決算はほぼ減益に転落するなど即座に悪影響が出た。翌年、メガバンクは人員削減を発表し、その流れが店舗の削減や通帳の有料化につながっている。

◇危うい地銀

 なかでも地銀の業績悪化が目立つ。地方経済は少子・高齢化と過疎化により急速に悪化している。人や企業が減れば、預金や個人へのローン貸出、企業への融資も減少してしまう。傘下に証券会社などを抱えるメガバンクが事業の多角化・国際化を進める一方、「銀行」以外の業務を持たないのも地銀の弱みだ。

 地銀の破綻は社会に対する影響が大きいため、金融庁は経営統合などの改革を迫っている。しかし再編により効率化が図られたところで、低金利や手数料収入の減少といった環境のもと、根本のビジネスモデルが崩壊している以上、遅かれ早かれ破綻は免れないのではないか。

 金融庁によると、地銀の再編は高コスト体質のメガバンクが対応しきれない中堅企業を支え、経済を成長させるために必要だという。また著者は、金融機関のコスト構造を考えると、個人商店から売上高5億円程度の企業まで地域に密接して取り組めるのは信用金庫や信用組合に限られるという話を聞く。実は近年、信用金庫をメインバンクとする企業が増えている。地銀の存続が不安視される一方、信用金庫の評価は高まっているのだ。

【必読ポイント!】
◆信用金庫の強み
◇なぜ順調なのか

 信用金庫は金融機関だが銀行とは組織形態が異なる。

 信用金庫は地域の会員や住民から資金を集めて地域の利益のために働く協同組織だ。預金は誰でもできるが会員資格がないとお金を借りることはできない。会員になるには営業エリアに住んでいるか、働いていることが条件となる。

 東京商工リサーチの調査では、銀行業界における信用金庫のシェアは2015年の調査開始以来7年連続で拡大している。